【マンガシナリオ】うちの番犬くんはマテができない!?

○愛瑠の家・愛瑠の部屋(夕方)

真理子の声「入るよ」

真理子が愛瑠の部屋のドアを開けると、犬のハルがおすわりをして真理子を見ている。

真理子「やっぱり愛瑠の部屋にいたのね。もうビックリしたじゃない〜」
と、ハルを撫でる。

ハル「ワンッ!」

真理子「ハルはほんとに愛瑠のこと大好きね。たまにはママのとこにも来てよー?」

ハル「ワンワンッ!」
と、尻尾を振る。

真理子が部屋を出て行ってから愛瑠は力が抜けて座り込む。

愛瑠「よ、良かったぁ……」

愛瑠が放心状態のその隙に、ハルが愛瑠の口元に口を寄せると、再び人間の姿になる。
愛瑠は口元を押さえながらわなわな震える。

愛瑠「なっなっ、なんで!? せっかく犬に戻れたのに!」

ハル「愛瑠がまたキスしてくれたら戻れるよ」

ハルはニコニコしながら愛瑠を見つめる。

愛瑠「さっきのは緊急事態だったからしただけで、もう私はしないから!」
と、宣言。


○高校・教室

愛瑠(とは言ったものの……これからどうしよ〜)

愛瑠は机に突っ伏して大きくため息をつく。

陽菜「随分おっきいため息だね」

エリ「そりゃそうだよ〜この間の合コンほんとハズレだったもん」

愛瑠「え……あ、あ〜!」

愛瑠(ハルのことがあったから合コンなんてすっかり忘れてた)

麗「愛瑠個室に連れ込まれたんでしょ!?」

陽菜「手出されてない? 大丈夫だった?」

愛瑠「手出される……」
と、考え込む。

陽菜「抱きつかれたとか!」

愛瑠はハルに抱きつかれたことを思い出す。

麗「手握られたとか!」

愛瑠はハルと手を握って帰ったことを思い出す。

エリ「キスされたとか!」

愛瑠は自分からハルにキスした時のことを思い出して顔が真っ赤になる。

愛瑠「(慌てて)違うの! あれは事故っていうか、仕方なくっていうか」

陽菜・麗・エリ「え!? もしかしてホントにしたの!?」

愛瑠「いやあの人とはしてないよ! あ……」

愛瑠(しまった!)

愛瑠は墓穴を掘ってしまったこのに気づくが、時すでに遅し。

陽菜「あの人とはってことは……」

麗「あの人以外とはそういうことあったんだ……?」

愛瑠「そうじゃなくて、今は言い間違えちゃっただけでね」

3人が悪い笑顔で愛瑠を見る。

エリ「放課後たっぷり聞かせてもらうからね」

愛瑠(そんなぁ〜〜!)


○高校・校舎の外(放課後)

エリ「さて、じっくり聞くとしましょうか」

陽菜「駅前のファミレスでいいよね?」

麗「さんせー!」

愛瑠「えぇ〜!?」

愛瑠が3人にガッチリ囲まれ歩いていると、校門の所に長身の男子が立っている。
下校中の他の生徒たちもチラチラ見ていて、女子たちは口々に「かっこいい」と噂する。

陽菜「誰かの彼氏かな?」

麗「誰ー? あんなかっこいい彼氏いるなんて私聞いてないけどー」

エリ「なんでちょっとキレてんの」
と、苦笑い。

愛瑠「ハル!?」

愛瑠がハルの名前を呼ぶと、3人が一斉に愛瑠の方を向く。

ハル「愛瑠〜」

ハルは愛瑠の方に駆け寄ってきて愛瑠をハグする。

愛瑠「(小声で)ちょっと離して! なんで学校来てるの!」

ハル「1秒でも早く愛瑠に会いたくて」

愛瑠(この男はー! すぐそういうこと口にするー!)

3人は愛瑠とハルを見て固まる。

麗「あの、失礼ですけどどちら様ですか?」

ハル「俺はハル。愛瑠の彼氏です」

陽菜・麗・エリ「彼氏ィ!?」

愛瑠「違うよ、違うからね。テキトーなこと言わないで!」
と、ハルを叱る。

しかしハルは気にしていない。

ハル「ごめん、違うんだって」
と、ニコニコしている。

陽菜「じゃあ一体2人はどういう……?」

ハル「んー家族、かな」

麗「親も公認の仲なの!?」

愛瑠「全然そんなんじゃないの!」

陽菜「年上ですか?」

ハル「うん、こう見えて90歳くらいだよ」

陽菜「アハハ。愛瑠の彼氏面白いね」

エリ「ぶっちゃけ、どこまで進んでるの?」

愛瑠「どこまでとかじゃなくて、まだ何も始まってないから!」

ハル「一緒にお風呂入ったりするよね」

陽菜・麗・エリ「お風呂!?」

愛瑠(間違ってないけど! それは犬のハルを私が洗ってあげてるだけでしょ!?)

ハル「それに毎日一緒に寝てるよ」
と、愛瑠の肩を抱き寄せる。

陽菜「一緒に……!」

麗「寝てる……!?」

エリ「やるじゃん愛瑠。もっと早く教えてくれればよかったのにー」

愛瑠「みんなが考えてるような関係じゃないの。ホントに!」

陽菜「はいはい分かった分かった」

エリ「せっかく迎えに来てくれたんだから、あとは2人でごゆっくり〜」

麗「明日こそ全部話してもらうからね愛瑠!」

ハル「バイバーイ!」

ハルは呑気に3人を見送る。
それを見て呆れた愛瑠はハルを置いてスタスタ歩いて行く。
ハルは慌てて追いかける。

ハル「もしかして迎えに来たこと怒ってる……?」

愛瑠「……」

ハル「じゃあ彼氏って言ったから?」

愛瑠「怒ってないよ、怒ってないけど……」

愛瑠(だって、人間のハルとどう接すればいいか分かんないんだもん……)

ハル「愛瑠は俺が人間になっても嬉しくない?」

愛瑠「……嬉しいよ。私だってハルとこうやってお喋りできたらいいなってずっと思ってたから」

ハル「じゃあ、俺のこと好き?」

愛瑠「もちろん好……!!」

愛瑠は「好き」と言いかけて、目の前にいる人間のハルを見てハッとなる。
ハルは愛瑠が何を言いかけたのか気づいてニヤニヤする。

ハル「(からかうように)今なんて言おうとしたの? す……?」

愛瑠「なっ、なんでもない!」

ハルは小さく笑う。

ハル「愛瑠に嫌われたくないし、今はこれで我慢するけど……」

ハルが「耳貸して」というジェスチャーをする。
愛瑠がハルの方に耳を寄せると、ハルが耳元で囁く。

ハル「絶対俺のこと好きって言わせるから。覚悟しといて」

愛瑠「……っ!」

至近距離で見つめ合う2人。
愛瑠は平静を装いながら、その心臓はバクバクしている。

愛瑠【ハルの本気の目と本気の声が、しばらく頭と耳から離れなかった】