春の朝。

満開の桜が風に揺れ、新しい制服に身を包んで通学路を歩いている。

制服を着た高校生たちは何か喋りながら楽しそうに登校している。


私の世界は静かすぎるほど静かだ。

「はぁ、、、」

小さなため息。
誰にも聞こえない、彼女だけの呼吸音が、春の朝に溶けて消えた。


これまで何度か転校を繰り返してきた。

期待しないように、心を無にして。

また“無難に”やり過ごすだけの新しい学校、きっと今回も何も変わらない。

ふと満開の桜に目をやる。

春なんて、桜なんて大嫌いだ。



そう思った瞬間、突然風が強くなり優里の顔に桜の花びらが舞い落ちる。

優里は思わず目を瞑った。強い風にあおられて体がぐらりとよろける。


後ろからスケボーのタイヤが地面を擦る音――優里は気づかない。


???「あぶないっ!」


ぶつかりそうになった瞬間


キィッ…とスケボーのタイヤが音を立てる。

ドンッ!

優里と誰かがぶつかる。

バランスを崩して倒れそうになる優里を、がしっと誰かが抱きとめる。


ゆっくり目を開ける。

まぶしい逆光の中に現れたのは、制服の上からパーカーを羽織った、背の高い少年。潤之助だった。

潤「大丈夫?……怪我とか、してない?」

少し息を切らしながら、心配そうに優里を見ている。

優里は少し戸惑いながらも、ゆっくりと首を横に振った。

潤「……そっか。よかった」

そう言って、潤はふっと安心したように笑い、そっと優里から離れる。

優里はスマホを取り出し、指で打ち込む

【ぶつかってしまってすみませんでした。】

小さな画面に映るその言葉。

潤之助はその画面を見て、すぐに首を横に振る


潤「俺の方こそごめん。スピード出しすぎた」


優里は目を見たまま、何も答えない)

潤「……聞こえてないのか?」

優里はその言葉は分かったように視線をそらす。


潤之助は自分のスマホを取り出し、素早く何かを打ち込む

【俺の方こそごめん。スピード出しすぎた。念のため病院行こう。どっか痛めたかもしれないし】

その画面を優里に差し出す。だが、優里はすぐに首を横に振り、自分のスマホに素早く打ち込む

【大丈夫です。ありがとうございます。】

そう表示された画面を潤之助に見せたあと、彼女はぺこりと一礼する

そして、くるりと背を向けて歩く。

その背後から、ソンフンとジョンウォンが駆け寄ってくる。

隼「潤!おっはよー、」

潤「……うるせぇ、朝から声デカい」

新「さっき女子と話してたけどなにかあったか?」

潤「……別に」

目線を前を歩く優里に向ける
つられて隼人と新も前を向く

隼「……あ!あの子……転校生じゃん!」

潤「お前あの子知ってんのか?」