「なんでここにいるの?留学は?」


私は、奥で着替えてきたらしいお兄ちゃんに一番気になっていたことを聞いた。

確か、お兄ちゃんの留学期間は1年ほどだった気がする。

まだ半年くらいしか経っていないのに…


「留学は中断してきた」


お兄ちゃんは悪びれる様子もなくそう言った。


「なんで?」

「だって、そろそろ春香に会いたかったから…」


そういうと思った。

小さい頃からお兄ちゃんは過保護というか…

私のことをすごく心配していた。

心配しすぎって思うくらい。

留学も本当は行きたくなかったらしいけど、高校三年生の時に進路に迷っていると、先生に「海外の大学に行ったら?」って勧められたらしい。

本当は大学の4年間、全部海外にいる予定だったんだけど、私と離れるのが嫌で駄々をこねて1年間にしたらしい。

ダメでしょ!と、起こりたい気持ちにはなるものの、しょんぼりしたようなお兄ちゃんの顔が目に入り、怒る気になれなかった。

いつもそう、私も結局お兄ちゃんに甘い…