「あ、ちょ…待って! きみきみっ!」
雑念を振り切り、そそくさとその場を後にする“儚なげな色白美人”を追い、光理はその細い手首を掴んだ。
当たり前だけど、触れた先から霧のようにすうっと消えていくようなファンタジーな現象は起こらない。が、掴んで引き止めたのはいいものの、思いの外ヒヤリと冷たかったその腕の体温に、光理は一瞬、言葉を詰まらせる。
「…………なんか用」
「えっ、あ、」
行く手を阻んだ割に言葉を発さない光理を、その切れ長の目は訝しく睨み付ける。
改めてまじまじと見つめれば見つめるほど、美しくて儚い。けれど光理の高揚感とはまるで反比例するように、眼前の美人はどんどん不機嫌さを露わにしていく。
「え、っとさ……」
ああヤバイ、なにか言わないと。初対面なんだから、ファーストインプレッションは明るく爽やかに。だけれどインパクトだって大切だ。でも長ったらしく喋るのはよくない。
よしここは端的に、且つ大胆に───。
光理は、ごくり、唾を飲み込んだ。
「一目惚れ! 付き合って!」
ぱ ち く り 。
突然、金髪頭のいかにもチャラそうな男に腕を掴まれ、一体なにを言い出すのかと思えば。晴の切れ長の綺麗な目は今や、丸く大きく見開かれている。
本当はもっと盛大に慌てふためきたいところを、目を見開くだけのクールなリアクションに留めた自分に拍手を送りたいと晴は思った。それもそのはずで、内心では、果てしない焦燥感に駆られていた。
