僕だけのヒーロー

  


「わ、悪かったよ! もうあんたには張り合わねえから…!」


じわり、じわり。距離を縮めて迫り来る恐怖に、男のうちの一人が懇願するが、晴はまったく聞く耳を持たないといった様子で、顔色ひとつ変えずに歩み寄る。


張り合うもなにも、六人の喧嘩に勝手に割って入ったのは晴だ。喧嘩を止めるでもなく、彼らの闘争に混じりたいなんていう純粋な参加意欲でもなく、───“自分こそが一番強い”のだと、そう誇示するためだけに割って入った次第だ。そんな晴に謝罪の言葉を投げ掛けるとは、男は余程必死であることが窺える。


「……念のために」


ポソリ、呟いたかと思うと───、


ガツンッッ と鈍い音を響かせ、嘆き叫んでいた男に踵落としを食らわせた。


蹴っ飛ばした男と、今踵落としを食らわせた男の制服は各々違っていて、これで北高・西高、双方の高校の代表をそれぞれ始末できたということになる。


「じゃあ、さよーなら」


晴は満足気にニコリと微笑むと、未だガタガタと身を震わせる男たちを背に、ひらひらと手を振った。


あー、ヤバイ、遅刻しそうだ───なんて、そんなのんびりしたことを考えながら。