ドゴオォォッッ! という大きな音と共に砂埃が舞い、不良連中六人のうち、勇猛果敢な一人を除く残り五人は目を瞑った。
やがて砂埃は収まり、視界が良好になるくらいまでは落ち着いたと感じ取った五人は、片方ずつゆっくりと、その瞼を開ける。
状況を把握することに数秒かかったが、たった今恐怖の対象へと立ち向かって行ったはずの大男が、数メートル先まで吹っ飛び倒れているという事実は、目を擦ってもう一度確認してみても変わらない。
楪 晴は、大男を蹴り飛ばした体勢───すなわち、振り返り際の、右足一本、回し蹴り。その体勢を未だ維持したまま、静かにそこに佇んでいる。
“本気”出すまでもないなあ、こんな雑魚。そんな無礼極まりない考えが晴の脳裏を過ぎる。
「み、右足だけでぶっ飛ばしやがった…っ!?」
唖然とする男たちを前に、晴はフゥと小さく息を吐き、上げたままにしていた右足をそっと下ろした。そして足を下ろす際に、今朝卸したばかりの真新しい学ランのズボンの裾が、砂で汚れているのが目に入り、ぱんぱんと軽く二度叩く。
「めっちゃマイペース……」
「めっちゃ呑気……」
その隙に逃げることもできただろうに、逃げるどころか起き上がることさえできない五人の男たちは、「逃げなくていいの?」と言いながらジリジリと近付いて来る晴を前に、嘆くことしかできない。
「女みてえな顔して…! クソ強え…ッ、チートだろッ…! こんな化け物…!」
一方で晴の方はというと、男たちに近付きながら、自分自身に感心していた。“女みたいな顔”、いただきました、本日も絶好調にバレてない。
