「ひっ…!あ、ぁ、あ、“悪魔”がきたあああっ」
「こ、こっちくんな!近寄んじゃねえ…!うわあああ!」
この六人の男たちは、ほんの数分前までは三対三の喧嘩をしていた不良連中───とは言っても、路地裏に潜んでいそうな程度のチンピラ共ではあるけれど。
どうにも藍生北高校と藍生西高校は昔から仲が悪く、街ですれ違うたびに小競り合いが生じるらしい。今日も今日とて、肩がぶつかっただの足が引っ掛かっただのなんだの、適当なイチャモンを付けて、殴る蹴るの争いに発展したようである。
それが今となっては───、声を震わせ、後ずさり、そして腰を抜かして尻餅さえもついている。
そしてその顔は、目の前の恐怖に、酷く慄いている様子だった。
「男ならさあ、シャキッと立って───、」
目の前の恐怖の唇はゆるりと弧を描く。ゆっくりとこちらへ近付いてくる。このままでは本気で殺られる。そう直感したのか、少しは根性があるらしいガタイのいい男が、ふらふらしながら果敢にも立ち上がった。
「クソッ…!うおおおおおあああ!」
掠れた声で叫びながら、グーにした拳を向けて、勇敢に飛び込んでいく大男。どうやら一人くらいはまともに立ち向かってくれる輩がいたようで、男たちの恐怖の対象───楪 晴は、わざとらしくきゅうっと口角を上げた。
「そうそう、そうこなくっちゃ」
なんて称賛しつつ、真正面から猪突猛進してくる男を、ヒョイっと身軽に、避けた。
そしてあとはそのまま、いつも通り。
