僕だけのヒーロー

 


「この街の不良を、ぶっ潰します」


サービス精神旺盛に、珍しくニッコリと微笑んでみたりして。


それなのに、───シーーン、と、一気に静まり返る体育館。漫画ならば“コチーン”なんて凍てつく効果音さえ入っていただろう。そろそろ、「帰れ帰れー!」「調子乗んなー!」くらいのモブの野次が飛んできてもいい頃合いなのに。


壇上から見下ろす景色は実に面白く、───「晴、なに言っちゃってんの!?」と慌てる光理の様子が、ここからだとよく見える。


それに、


「はァ!? てめぇ、なに寝言言ってんだブッ殺すぞ!」


1年B組から飛んでくる罵声。


殺意剥き出しの形相で晴を睨むのは、赤髪の───もとい藍生に存在する不良チーム“緋虎《アカトラ》”の総長・赤桐 紅。


それにしても、ブッ殺すって。おいおい、聞いていた通り、いや、聞いていた以上におっかない。


「待ってろよ今引き摺り下ろしてそのまま血祭りに……ッ」

「ちょ…ッ! こ、紅ちゃん落ち着いて! 誰か抑えんの手伝って!」

 
隣に居た、背の低い幼い顔立ちの少年の指示によって、数人がかりで周りの男子生徒たちが暴れ狂う赤桐 紅を抑え込む。


プクク。いやあ愉快、愉快。晴の胸は高鳴っていた。