僕だけのヒーロー

 
 


「っぅえ!? 晴が代表挨拶!?」

「圧倒的首席で合格したからね」

「ええっ!? 言ってよ!」


俺の晴マジかっけー、と光理は尊敬の眼差しを向けた。しかしながら俺の晴ではない。


晴はスっと静かに席を立ち、壇上へと続く階段に足を掛ける。


ざわざわ、ざわざわ、声を顰めるつもりがあるのかないのか、いずれにしろ野性児の晴の聴覚は、周囲にぽろぽろと溢れ始めた音を的確に拾い上げた。


「あいつ髪色明るすぎね? あれが首席?」

「色しッッろ!」

「にしても超イケメン?」

「イケメンつうか、なんか、美人……だな? ビビるわ」

「あれ? 俺、あいつ今朝見かけたかも。確か北高と西高の連中を───」


途端に体育館が騒がしくなったが、晴にしてみれば想定内のザワつきだった。


むしろもっと盛大に賛否両論の討論を繰り広げてくれたって構わないし、ブーイングの嵐を浴びてペットボトルやジュースの缶を投げつけられるくらいまでは許容範囲なのに。


壇上に到着。カチ、とマイクのスイッチを入れる。あー、体育館広い。人多い。一通り見渡し、改めて本当に男ばかりの学校だな、と当たり前のことを感じながら、ただ一点のソレに目を遣った。かちかちと狙いを定めていく。


───赤髪、赤髪、1年B組、赤桐 紅(あかぎり こう)、うん、いる。


標的をロックオンし、晴はすうっと大きく息を吸い込んだ。