僕だけのヒーロー

 



入学式を控えた一年生は、体育館へと移動していた。その道中、お喋り好きの光理の質問攻めは止《とど》まることを知らない。


「晴、身長なんセンチなん?」

「……169cm」

「ふーん、男にしちゃ低いか、もったいね〜」

「………」


なにが“もったいね〜”のか。


そんなのはきっと愚問で、“女であったならば、きっとそのすらりとした長身は、十分なステータスになり得たのに”───とか、そんなところだろう。ただし実際は自分は女であるから、本来なら褒められているに等しい。


だから晴は、首を傾げながら答えた。


「……どーも?」

「なにゆえ疑問系? っあ、ちなみに俺178センチー!」

「いや聞いてないけど」


正直、晴は焦っていた。


一瞬でも女だと勘付かれたのは光理が初めてだし、しかもこの男、かなりデリカシー無さそうだから、ズケズケ人のテリトリーに入ってきそうで、


「晴、初体験いつ?」

「はッ……!?」


い、言わんこっちゃねえーーー!


いつものように冷静でいられたならば、「“体験”って、なんの体験? 答えようがないんだけど」と、とぼけながら上手く躱すこともできただろうのに、ドギマギしながら、晴は強めに「ナイ」と言い放つ。