カタン、と椅子を引いて、晴は席に着いた。
「……さっきはどうも、“勘違い野郎くん”」
元々のハスキーボイスを、更にもう一オクターブ下げる。ついでにそうやって不躾な言葉でも投げれば、
どーよ、完全に男っしょ───?
ふふんと勝ち誇る晴の心中とは裏腹に、目の前の金髪男───光理は不服そうにウーンと唸った。両腕を畳んで首を傾げて、まじまじと晴を凝視する。
「そうなんか、マジで男だったんか……」
「………」
くっきりとした二重瞼を細め、身体に穴が開いてしまうんじゃないかと思うほどジイイと見つめてくる光理に、晴はあからさまに瞳を逸らした。マズイ、やましいことがあると勘付かれるだろうか。そうは言ってもこんなに近くで見つめられたのでは、心の中まで読まれてしまいそうでたまったもんじゃない。
「学ランを着ていたにも関わらず女だと信じて止まなかったなんてなんたる愚行…いやでも改めて近くで見てもやっぱり俺好みのツンとした高嶺の花系…この俺様が間違えるなんてよっぽどだな…こいつ男性ホルモンどうなってんだ…ブツブツブツブツブツブツ」
「なんて?」
あまりに口早に言葉を紡いでいく光理の独り言は、晴の耳には一切届かない。とりあえずは男であると納得したと判断していいのだろうか。ブツブツブツという音のみを発する眼前の人間の不気味さに、晴はドン引きする他なかった。
