「………は?」
月丘 光理は、思わず声を漏らした。
慌てて立ち止まった勢いで、連なったピアスがチリィンと軽やかな音を鳴らし擦れ、金色の髪の毛がふわりと風に揺れる。
少年の瞳は、驚愕と困惑、そして期待と興奮の色が入り混じり、目の前で起こっている出来事の一部始終を、片時でも見逃すまいとして捉えている。
彼の住む藍生という街は、控えめに言ってもガラの悪い連中ばかりが揃っている、いわゆる不良の巣窟だ。
街を歩けば、あちらこちらでいろんな人間が喧嘩をしている。チーム同士で争う者、高校単位で争う者、タイマン勝負を挑む者など。光理を始めとする藍生の住人にとっては、それが日常で、それが風景だった。「ああ、今日もやってんな」と横目でさらりと確認しては、そのまま素通りしてしまうくらいの。
だから目の前の“ソレ”も、細やかな日常のひとつに過ぎない、
───はずだった。
