
色々と聞きたいことはあるが、ともかく怪異らしい。
怪異……かぁ。
乗り気ではないわたしは、大きなため息を吐く。
「何よ。どうしたの?」
「だって怪異。嫌だなぁって思って」
学園の美少女、奈乃花さんは、目を丸くする。
「オカルト研究部でしょ? 怪異は得意で大好きなんじゃないの?」
「人によるんじゃない? わたしは、怪異嫌いな方のオカルト研究部ってことで」
黒羽先輩は、怪異大好き過ぎてイギリスにまで留学してしまった人なのだが、わたしは違う。
招き猫のミタマちゃんは可愛いし好きだけれども、囲碁将棋部の部室である和室に出て来たような気持ち悪いドロドロとした怪異は嫌いだ。
「仕方ないでしょ? ほら! 頑張って!」
「いや、無理だし」
出来れば拒否したい。
「彩音ちゃん、借金!」
「うっ!」
田沼君に痛いところを突かれる。
「借金を生徒会に返さないと、それこそオカルト研究部がなくなっちゃうよ!」
「はぅぅぅ」
黒羽先輩がイギリスから帰ってくるまでは、オカルト研究部を守らなくてはならない。
わたしがオカルト研究部を見捨てたら、可愛いミタマちゃんが路頭に迷うのだ。
「あら、生徒会に借金があるの?」
「残念ながら……」
「だったら、怪異をサクサクッと解決してくれたら、報酬は払うわよ!」
「えっ!報酬?」
「ええ、この間、大会で主演女優賞を取った特別金があるもの。あれは、私が使い道を決めても良いはずよ」
「い、いくら! いくら払ってくれるんですか! 女王様」
わたしは、奈乃花さんの手を握って迫る。
神様、仏様、女王様、奈乃花様だ!
もう借金を払ってくれるのであれば、魂を捧げようではないか!
そうでもしなければ、とても借金を返すメドなんてないのだ。
そもそも、紅羽の決めたシステムが悪い。
公式大会など存在しないオカルト研究部には、部費なんて獲得するチャンスすらない。
こんなに、こんなに学園の平和をオカルト研究部が守っているというのに!
「あ、ええっと、そんなにはないわよ」
わたしのあまりの気迫に、奈乃花さんはたじろいていた。
怯えながら奈乃花さんの提示した額は、私が紅羽に提示された額の三分の一だった。
助かります! ごっちゃんです!
「ミタマちゃん、頑張っ!」
「うにゃ! にゃんでミタマに丸投げするにゃ!」
すっかり油断してヘソ天でくつろいでいたミタマちゃんが慌てる。
だって、怪異怖いし。
「とにかく、話してみて下さい! 奈乃花さん!」
「え、ええ……」
奈乃花さんは、怪異についてゆっくりと話し始めた。
