「で、何? どんなことが起きたの?」
紅羽に大人しくしていろって言われたことは、この際すっかり忘れることにして、八重てやに聞いてみる。
「なんか、せっかく作ったケーキが食べてもらえないの」
八重てやは、悲しそうな顔をする。
そりゃ悲しいよね。
だって、ケーキって、作るの大変なのだ。わたしも作ってみたことはあるけれども、膨らまなかったもの。
「単にまずかったのでは……」
田沼君がポソリとつぶやく。
「は? ありえんし。あたしのつくるケーキだよ? そんなの美味しいに決まっているし」
八重てやが、ぶちぎれる。
「田沼君、それはちょっと駄目だと思う」
「え……そう? だって、食べない理由なんて」
「うっさい! そんなはずないし!」
そんなはずないと思うから、八重てやは悩んでいるのだ。
「おかしいんだよ。最初はちゃんと皆おいしいって言って食べてくれていたのに」
「最初は?」
「そう! 最初は! それが、ここ最近になって急に食べてくれなくなって」
「ふうん……最近……」
そうなんだ。それは、変だ。
わたしは、一つ気づいた。
演劇部の怪異も、最近になって現れたのだと言っていた。
「わかる! 囲碁将棋部も、変になったのは、つい最近のことなんだ」
田沼君が、八重てやに賛同する。
そうなんだ。囲碁将棋部の怪異もなんだ。
最近……そうか、最近になって、急に怪異が動き出したんだ。
それって……。
わたしの頭の中に、黒羽先輩の顔が浮かぶ。
あ、そうか。
黒羽先輩が学園からいなくなって留学しちゃったから?
「ねえ! ミタマちゃん?」
「なにかにゃ?」
「怪異が突然動き出したのって、黒羽先輩がいなくなったから?」
わたしの言葉に、ミタマちゃんがふむ……と、考え込む。
「あるかもしれんにゃ。 だけれど、まだ、可能性。それだけが原因と考えるのは、ちょっと短絡的だにゃ」
そうなんだ……。
でも、八重てやの言っている異変も、なんだかやっぱり怪異っぽいような気がする。
「分かった! 調べる!」
「わ、ありがとう!」
「だから、試しにケーキを作って!」
ワクワク……。いや、決して、ケーキ目的では……。
ワクワク……
「もちろんよ!」
やった! 今回の仕事は、ちょっと楽しみかもしれない。
「分かりやす過ぎる……」
田沼君が、呆れた目でわたしを見ていた。
ち、違うから! 怪異をやっつけるためには、ほら、どんなケーキなのかも見ておきたいから!
紅羽に大人しくしていろって言われたことは、この際すっかり忘れることにして、八重てやに聞いてみる。
「なんか、せっかく作ったケーキが食べてもらえないの」
八重てやは、悲しそうな顔をする。
そりゃ悲しいよね。
だって、ケーキって、作るの大変なのだ。わたしも作ってみたことはあるけれども、膨らまなかったもの。
「単にまずかったのでは……」
田沼君がポソリとつぶやく。
「は? ありえんし。あたしのつくるケーキだよ? そんなの美味しいに決まっているし」
八重てやが、ぶちぎれる。
「田沼君、それはちょっと駄目だと思う」
「え……そう? だって、食べない理由なんて」
「うっさい! そんなはずないし!」
そんなはずないと思うから、八重てやは悩んでいるのだ。
「おかしいんだよ。最初はちゃんと皆おいしいって言って食べてくれていたのに」
「最初は?」
「そう! 最初は! それが、ここ最近になって急に食べてくれなくなって」
「ふうん……最近……」
そうなんだ。それは、変だ。
わたしは、一つ気づいた。
演劇部の怪異も、最近になって現れたのだと言っていた。
「わかる! 囲碁将棋部も、変になったのは、つい最近のことなんだ」
田沼君が、八重てやに賛同する。
そうなんだ。囲碁将棋部の怪異もなんだ。
最近……そうか、最近になって、急に怪異が動き出したんだ。
それって……。
わたしの頭の中に、黒羽先輩の顔が浮かぶ。
あ、そうか。
黒羽先輩が学園からいなくなって留学しちゃったから?
「ねえ! ミタマちゃん?」
「なにかにゃ?」
「怪異が突然動き出したのって、黒羽先輩がいなくなったから?」
わたしの言葉に、ミタマちゃんがふむ……と、考え込む。
「あるかもしれんにゃ。 だけれど、まだ、可能性。それだけが原因と考えるのは、ちょっと短絡的だにゃ」
そうなんだ……。
でも、八重てやの言っている異変も、なんだかやっぱり怪異っぽいような気がする。
「分かった! 調べる!」
「わ、ありがとう!」
「だから、試しにケーキを作って!」
ワクワク……。いや、決して、ケーキ目的では……。
ワクワク……
「もちろんよ!」
やった! 今回の仕事は、ちょっと楽しみかもしれない。
「分かりやす過ぎる……」
田沼君が、呆れた目でわたしを見ていた。
ち、違うから! 怪異をやっつけるためには、ほら、どんなケーキなのかも見ておきたいから!
