やっつけなきゃ!
私は、護符を構える。
……て、これをどこに付ければいいんだろう。
「だ い す き あ い し て る そ ば に い て」
舞台に夢中になっている怪異は、照明の光と溶けあって、自分の体を伸ばしていく。
「彩音! ほら、特徴のある部分を探すのにゃ!」
私を見つけたミタマちゃんが、一階の観客席からピョンとジャンプしてギャラリーに登ってくる。
おお、さすが猫! 身のこなしが軽い!
「えっと、ほぼ液体なの。どこに特徴なんてあるのよ?」
「よく相手を観察するにゃ!」
観察……
「も う は な さ な い」
怪異が、口もないのにクスクスと笑い出す。
見れば、もう怪異の体のほとんどが、照明の光と混ざり合って、舞台へと身を乗り出している。
「これ、相当まずいんじゃないの?」
舞台に目を向ければ、奈乃花さんが歌っているが、奈乃花さんの首には、怪異が絡みついて、とても歌いにくそうだ。
紅羽は……
「なっ! 何?」
あのとっても強そうな紅羽の背後にいる怪異のお姉さんが、照明の光に溶け込んだ怪異を鷲掴みにして、引き千切っている。
うわぁ……同じ怪異なのに、容赦ない……
紅羽にまとわりつけない照明怪異は、ますます奈乃花さんに向かっていくが、紅羽の怪異は、紅羽だけに興味があるみたいで、奈乃花さんを守ってくれる気はなさそうだった。
「早くしないと、奈乃花が危ないにゃ!」
ミタマちゃんがそう急かすけれども、どうしたらいいんだろう。
ええっと、この怪異の特徴……。
灰色がかってあまり綺麗ではない怪異の体。それを、じっと見つめていると、真っ黒の塊が見えてくる。
「あれ……なんだろう」
「見つかったのかにゃ?」
「分かんないよ。でも、すごく小さいけれども……」
確かに、本の一筋だけ真っ黒な糸のようなものが見える……。
動物の……いや、違う。人間の髪の毛だ!
「ひゃあああ」
私は、恐怖で氷を背中に投げ入れられたような寒気を感じる。
「何を今さら。怪異くらい、もうそろそろ見飽きたんじゃにゃいの?」
「え、でも気持ち悪いものは、何度見ても気持ち悪いの!」
そう。何度ゴキブリを見ても怖いのと一緒だ。怪異だって、何度見ても怖いものは怖いのだ。
うう……あれに護符を貼ればいいのよね?
「早くするにゃ! 奈乃花が大変にゃ!」
「分かっているわよ! ええい!」
私は、怪異のぐにょぐにょする体の中に手を突っ込んで、怪異の中にあった髪の毛に護符を貼った。
「きゃややややややややややややや」
怪異が叫ぶ。
「え、何? 音響のハウリング音?」
「うわ、なんだ、この音!」
観客達が耳を塞ぐ。
怪異と混ざった光は、何事も無かったように普通の光に戻って、舞台を明るく照らしている。
「良かった。間に合ったみたい」
舞台は、無事に幕を下ろした。
私は、護符を構える。
……て、これをどこに付ければいいんだろう。
「だ い す き あ い し て る そ ば に い て」
舞台に夢中になっている怪異は、照明の光と溶けあって、自分の体を伸ばしていく。
「彩音! ほら、特徴のある部分を探すのにゃ!」
私を見つけたミタマちゃんが、一階の観客席からピョンとジャンプしてギャラリーに登ってくる。
おお、さすが猫! 身のこなしが軽い!
「えっと、ほぼ液体なの。どこに特徴なんてあるのよ?」
「よく相手を観察するにゃ!」
観察……
「も う は な さ な い」
怪異が、口もないのにクスクスと笑い出す。
見れば、もう怪異の体のほとんどが、照明の光と混ざり合って、舞台へと身を乗り出している。
「これ、相当まずいんじゃないの?」
舞台に目を向ければ、奈乃花さんが歌っているが、奈乃花さんの首には、怪異が絡みついて、とても歌いにくそうだ。
紅羽は……
「なっ! 何?」
あのとっても強そうな紅羽の背後にいる怪異のお姉さんが、照明の光に溶け込んだ怪異を鷲掴みにして、引き千切っている。
うわぁ……同じ怪異なのに、容赦ない……
紅羽にまとわりつけない照明怪異は、ますます奈乃花さんに向かっていくが、紅羽の怪異は、紅羽だけに興味があるみたいで、奈乃花さんを守ってくれる気はなさそうだった。
「早くしないと、奈乃花が危ないにゃ!」
ミタマちゃんがそう急かすけれども、どうしたらいいんだろう。
ええっと、この怪異の特徴……。
灰色がかってあまり綺麗ではない怪異の体。それを、じっと見つめていると、真っ黒の塊が見えてくる。
「あれ……なんだろう」
「見つかったのかにゃ?」
「分かんないよ。でも、すごく小さいけれども……」
確かに、本の一筋だけ真っ黒な糸のようなものが見える……。
動物の……いや、違う。人間の髪の毛だ!
「ひゃあああ」
私は、恐怖で氷を背中に投げ入れられたような寒気を感じる。
「何を今さら。怪異くらい、もうそろそろ見飽きたんじゃにゃいの?」
「え、でも気持ち悪いものは、何度見ても気持ち悪いの!」
そう。何度ゴキブリを見ても怖いのと一緒だ。怪異だって、何度見ても怖いものは怖いのだ。
うう……あれに護符を貼ればいいのよね?
「早くするにゃ! 奈乃花が大変にゃ!」
「分かっているわよ! ええい!」
私は、怪異のぐにょぐにょする体の中に手を突っ込んで、怪異の中にあった髪の毛に護符を貼った。
「きゃややややややややややややや」
怪異が叫ぶ。
「え、何? 音響のハウリング音?」
「うわ、なんだ、この音!」
観客達が耳を塞ぐ。
怪異と混ざった光は、何事も無かったように普通の光に戻って、舞台を明るく照らしている。
「良かった。間に合ったみたい」
舞台は、無事に幕を下ろした。
