桃源学園の朝、寮生達は、体育館に集められていた。
毎週月曜日の朝礼である。
壇上には、中条院紅羽が立っていた。
背筋を伸ばして、スッと姿勢よく歩く紅羽の姿は優雅で、皆の憧れの的だった。
「先週の活動で、功績があったのは、野球部」
紅羽の澄んだ声に、歓声が上がる。
野球のキャプテンが、副生徒会長の吉川美波に促されて壇上に上がる。
「おめでとう。野球部の部費は、上乗せされる」
紅羽に握手されて、大きな体の野球部キャプテンがむせび泣く。
「紅羽様! ありがとうございます!」
深々と頭を下げる様子は、まさに王様に拝する領民のそれであった。
だが異常だ。
全ての部活の予算組から存続許可まで、全てが生徒会長である紅羽の一存で決まる。
紅羽に目をつけられて、「廃部だ」と、一言言われてしまえば、それで明日からその部活は活動できなくなるのだ。
あまりにも、権力を持ちすぎている。
はっきり言って異常だ。
「そんなの! 認めない!」
この状況に異を唱えるのは、このわたし、佐藤彩音だった。
「またオカルト研究部か」
心底呆れたようなゴミムシを見る目で紅羽がわたしを見る。
すっっごいムカつく。
毎週朝礼でこうやって異議申し立てをしているのは、誰のせいだと思っているんだ。
「オカルト研究部は、廃部を言い渡したはずだが?」
「だから、それを認めないって、言ってんの!」
そう、わたしが毎週こうやって騒ぎ立てているのは、紅羽がオカルト研究部を廃部にしたから。
一年生のわたししか部員がいないオカルト研究部。紅羽は、生徒会長権限で、オカルト研究部に廃部を言い渡したのだ。
そのせいで、オカルト研究部は、部費ははくだつ、部室も追われて、今は、一階の階段下の微妙な場所に追いやられている。
毎日、オカルト研究部の備品の一つである招き猫のミタマちゃんを抱きかかえて涙にくれる日々なのだ。
「ふ、不当な決定は、認めないってば!」
ま、負けない。一人残された私の使命なのだ。
わたしが負けたら、それでオカルト研究部は本当に無くなってしまう。
「ほう……この俺が、温情をかけて一階階段下スペースを使わせてやっているというのに、文句があると?」
紅羽がギロリとわたしをにらむ。
い、イケメンの敵意がこもったにらみ、怖すぎるんだけど!
半泣きのわたしを助けてくれるものなどいない。
皆、紅羽の怒りが怖くて見てみぬフリだ。
「だけど……その……わたしはまだ部員だし、備品は保管しなきゃだし、七番目の鏡子さんから学校を守らなきゃだし……」
「お前は別の部に行け! 備品は捨てろ! 七番目のなんとかは、ただの迷信だ!」
「ダメだってば! 七番目の鏡子さん、本当にいるんだから!」
「連れていけ! 強制退場だ!」
「わ、やだ……本当に!」
生徒会役員達に両腕をがっしりホールドされてしまった。
「この霊感ゼロの合理主義者め。お前がそんなだから、鏡子さんに操られているんだ! どうして見えない! その右肩にもたれかかってほくそ笑む鏡子さんの姿が!」
そうなのだ。紅羽の隣には、我が学園の七不思議、七番目の怪異である『七番目の鏡子さん』が、ガッツリ取り憑いているのだ。
学園最強の怪異である鏡子さんと王様生徒会長の紅羽の組み合わせ、控えめに言っても最悪なのだ。
「つ れ て い け !」
「や、ちょっと! 紅羽! バカ生徒会長! 呪われたって知らないからね〜!」
わたしは紅羽の命令により、体育館から強制退場させられてしまった。
毎週月曜日の朝礼である。
壇上には、中条院紅羽が立っていた。
背筋を伸ばして、スッと姿勢よく歩く紅羽の姿は優雅で、皆の憧れの的だった。
「先週の活動で、功績があったのは、野球部」
紅羽の澄んだ声に、歓声が上がる。
野球のキャプテンが、副生徒会長の吉川美波に促されて壇上に上がる。
「おめでとう。野球部の部費は、上乗せされる」
紅羽に握手されて、大きな体の野球部キャプテンがむせび泣く。
「紅羽様! ありがとうございます!」
深々と頭を下げる様子は、まさに王様に拝する領民のそれであった。
だが異常だ。
全ての部活の予算組から存続許可まで、全てが生徒会長である紅羽の一存で決まる。
紅羽に目をつけられて、「廃部だ」と、一言言われてしまえば、それで明日からその部活は活動できなくなるのだ。
あまりにも、権力を持ちすぎている。
はっきり言って異常だ。
「そんなの! 認めない!」
この状況に異を唱えるのは、このわたし、佐藤彩音だった。
「またオカルト研究部か」
心底呆れたようなゴミムシを見る目で紅羽がわたしを見る。
すっっごいムカつく。
毎週朝礼でこうやって異議申し立てをしているのは、誰のせいだと思っているんだ。
「オカルト研究部は、廃部を言い渡したはずだが?」
「だから、それを認めないって、言ってんの!」
そう、わたしが毎週こうやって騒ぎ立てているのは、紅羽がオカルト研究部を廃部にしたから。
一年生のわたししか部員がいないオカルト研究部。紅羽は、生徒会長権限で、オカルト研究部に廃部を言い渡したのだ。
そのせいで、オカルト研究部は、部費ははくだつ、部室も追われて、今は、一階の階段下の微妙な場所に追いやられている。
毎日、オカルト研究部の備品の一つである招き猫のミタマちゃんを抱きかかえて涙にくれる日々なのだ。
「ふ、不当な決定は、認めないってば!」
ま、負けない。一人残された私の使命なのだ。
わたしが負けたら、それでオカルト研究部は本当に無くなってしまう。
「ほう……この俺が、温情をかけて一階階段下スペースを使わせてやっているというのに、文句があると?」
紅羽がギロリとわたしをにらむ。
い、イケメンの敵意がこもったにらみ、怖すぎるんだけど!
半泣きのわたしを助けてくれるものなどいない。
皆、紅羽の怒りが怖くて見てみぬフリだ。
「だけど……その……わたしはまだ部員だし、備品は保管しなきゃだし、七番目の鏡子さんから学校を守らなきゃだし……」
「お前は別の部に行け! 備品は捨てろ! 七番目のなんとかは、ただの迷信だ!」
「ダメだってば! 七番目の鏡子さん、本当にいるんだから!」
「連れていけ! 強制退場だ!」
「わ、やだ……本当に!」
生徒会役員達に両腕をがっしりホールドされてしまった。
「この霊感ゼロの合理主義者め。お前がそんなだから、鏡子さんに操られているんだ! どうして見えない! その右肩にもたれかかってほくそ笑む鏡子さんの姿が!」
そうなのだ。紅羽の隣には、我が学園の七不思議、七番目の怪異である『七番目の鏡子さん』が、ガッツリ取り憑いているのだ。
学園最強の怪異である鏡子さんと王様生徒会長の紅羽の組み合わせ、控えめに言っても最悪なのだ。
「つ れ て い け !」
「や、ちょっと! 紅羽! バカ生徒会長! 呪われたって知らないからね〜!」
わたしは紅羽の命令により、体育館から強制退場させられてしまった。