「誰が来たの?」
あまりのショックにボクが固まっていると、追いかけてきた唯ちゃんがボクの後ろから玄関を眺めた。
「なあに? そのブランケット。」
「エッ?」
(やっぱり大人には、ユウくんたちはブランケットに見えるんだ!)
ボクは慌ててユウくんと黒いブランケットを両脇に抱え込んだ。
「に、2枚ともボクのブランケットだよ。
ここに来る道で落としたのを、親切な人が拾って届けてくれたみたい!!」
「よくここが分かったわね。」
「それはえーと、タクシーの運転手さんだからだよ!」
「ああ、タクシーの車内に忘れたのね。もしかして、外に出ようとしたのはコレを探すためだったの?」
力強く何度も頷くボク。
「ならよかった。
今日は天気が荒れるから、家を出ちゃダメよ。」
唯ちゃんはボクの説明に納得した顔をして居間に戻っていった。
まだ胸のドキドキが止まらない。
ユウくんはボクに得意げに囁いた。
「ね、言った通りだ。
やっぱり大人にはユウくんが見えないでしょ?」
ボクは深呼吸をしてからユウくんに向き直った。
「ユウくん、太陽先輩がブランケットになった状況を、詳しく説明できる?」
「えっと・・・それは本人から聞いたらいいんじゃないかな?」
「本人に?」
その時ボクの手に、黒いブランケットから生暖かい息が漏れた。
「おい、古明地! どうなってんだ、この体‼」
「ヒィッ!」
突然のハスキーな声に驚いたボクは、黒いブランケットを廊下に投げ捨ててしまった。
「いって―な、乱暴に扱うなよ!」
(痛いの⁉)
驚きすぎて言葉が出ないボクに代わって、ユウくんが飄々と黒いブランケットを拾い上げた。
「へえ、喋れるんだ?」
「当たり前だ!」
ボクは顔を覆った両手の隙間から、2人(?)を見つめた。
(どうなってるかなんて、こっちが聞きたいよー!)
「あ、そうか。ブランケットが喋るんじゃなくて、ブランケットの声が聴こえる人が居るってことか。」
張り詰めた空気の中、ユウくんだけが納得してニコニコしているけど、ボクには意味が分からない。
もう、色々起こりすぎ!
夢なら醒めて!!
※
とりあえず子供部屋に移動したボクらは、慎重に学習椅子の背に太陽先輩を掛けた。
これって痛くないかな?
「ふぅ~。やっと落ち着けるぜ。」
男らしい顏が浮かぶようなハスキーな声。
どう見てもブランケットにしか見えないのに、不思議。
ユウくんとボクは椅子と正対するベットの端に腰かけて、話を切り出した。
「あの・・・それで、先輩がブランケットになった時のことを詳しく話してくれませんか?」
太陽先輩は少し怒った口調で話し始めた。
「古明地を追おうとしたらコイツが邪魔するから、平手で胸をどついたんだ。」
「そうそう、ドン、ってどつかれた。」
ユウくんが無邪気に相づちを打つ。
先輩の声のトーンがどんどん暗くなる。
「そしたら、心臓が急に苦しくなって、動けなくなった。」
「うんうん。急に胸を押さえてうずくまった。」
「で、気づいたら俺は黒い布切れになっていて、コイツに拾われてここまで来た・・・。」
「チッチッチ。布切れじゃなくてさー、ブランケットって言うんだよ。」
大人しく太陽先輩の話を聞いていたユウくんが、急に大きな声を出した。
「僕も実はブランケットだったの。生まれながらのね♪」
太陽先輩が驚いたように呻いた。
「え、オマエはなんで人間になったの?」
「その理由を探すために、ボクたちはここに来たんだ♪
だからー、みんなでなかよくしよーね♡」
いつものんきなユウくんの言葉。
でも、今はすごく救われる気がする。
ボクはとりあえず気持ちを落ちつけて、太陽先輩に話しかけることにした。
「えっとまず、このユウくんの言っている話は本当のことです。
太陽先輩が変身した理由はよく分からないけど、ユウくんの変身の謎が解ければ解決するかもしれない・・・と思います。」
ひと呼吸置いてから太陽先輩が質問してきた。
「で、解決できそうなの?」
「それが・・・。」
ボクが今までのことーーーおばあちゃんの木のボビン糸でユウくんを縫ったこと、自称魔女のおばあちゃんのことを調べようとしていることをかいつまんで話すと、太陽先輩は唸り声をあげた。
「魔女? 魔法? でも、俺には糸は関係ないだろ。だいたい、縫われてねーし。」
「そうなんですよね・・・。」
ボクはそれ以上、何も言えなくてうつむいた。
(もう頭がいっぱい過ぎて、言葉が出てこないよ!)
その時、隣に座っていたユウくんが急に立ち上がって大きな声を出した。
「まだココに来たばっかりで、何も調べてないんだから、これからだよ。
1人で悩むより、みんなで考えたほうが絶対に解決するから。
太陽も一緒に謎を解き明かそうよ!」
「・・・まぁ、そうだな。
古明地、オマエもわけが分からないのに責めたりしてゴメン。」
「あ、いえ。大丈夫です。」
意外すぎる。
苦手な太陽先輩に謝られると思ってなかったボクは、ビビリながら頭を下げた。
ユウくんはニコニコしながらおもむろに、太陽先輩の肩を組んだ。
「さぁ、仲良しになるためにはコレしかない! みんなでくるまろー‼」
「え。」
「は?」
黒いブランケットでボクの体を包み込んだユウくんは、そのままボクを抱きしめた。
2枚のブランケットの柔らかくて温かい感触に包まれたボクは、蕩けるような極上の気持ち良さを感じた。
(うわぁ、ふわふわであったかい!)
「なっ、何するんだよッ!」
ボクとユウくんに挟まれた黒いブランケットの生地の表面が、急に固くなった気がした。
ユウくんは黒いブランケットを優しく撫でた。
「リラックス・リラックスー! 萌音にくるまると、気持ちがいいでしょー?」
「おまっ・・・やめろ、俺は男だぞ!
それに古明地だって恥ずかしいだろ!!」
(た、たしかに、そうかも!)
勝手に癒されていたボクは、急に現実の太陽先輩を思いだして体が火照った。
(でも、今の太陽先輩なら・・・大丈夫なんだけど。)
ユウくんは意味がわからないというように呆れた顏で両手を上に向けた。
「なに言ってんの。
僕も男のコだけど、くるまるのに男とか女とかは関係ないよ。」
「人間には関係あるの!
ったく、わけわからん! 古明地、コイツの暴走を止めてくれ!!」
「萌音はね、いつも僕にくるまってるよ♪」
「なんだと・・・!?」
耳元でギャーギャーうるさい2人にくるまれながら、ボクはなぜか幸せな気分になっていた。
※
次の日の朝、ボクはおばあちゃんの作業部屋の掃除をするという体で唯ちゃんに離れの鍵を借りた。
「じゃあ、みんなでおばあちゃんの家を捜索しよう。」
ボクは肩に太陽先輩を羽織って段ボールを一つ一つ開けていった。
糸の歴史が分かる日記とか手帳みたいなのがあるといいなと思ったけど、そういうものは見つからなかった。
その代わりに裁縫に使う生地やボタンが大量に出てきた。
(ボクや唯ちゃんにこれを有効利用できる能力があればなぁ。)
もったいないなと思いながら、ボクは段ボールの蓋を閉じた。
「これだけ探してないなら、探す視点を変えたほうがいいかもしれないな。」
お昼近くなって、ボクの肩の上で太陽先輩が呟いた。
「視点? どうやってですか?」
「まず、確かめたいことがあるんだけど・・・魔法の糸は今どこにあるんだ?」
「あ、ココにあります。」
ボクはポケットから木のボビンに巻かれた魔法の糸を取り出した。
「よし。これを古明地のおばさんに渡して、布を縫ってもらうんだ。」
「ええっ⁉」
物置から最後の段ボールを離れの前に運んだユウくんが、楽しそうに目を輝かせた。
「太陽、頭イイね! そしたら仲間が増えるから、謎が解決しやすくなる‼」
(じ、冗談でしょ?)
ボクは身震いして首を振った。
「ムリ! これ以上登場人物が増えたら、ボクの神経が持ちませんッ!」
「目的は仲間を増やすことじゃない。」
すぐに太陽先輩がフォローした。
「俺の考えではたぶん・・・いや、それはあとで話すか。
とりあえず古明地のおばさんに、糸を布に縫いつける作業を頼めないか?」
太陽先輩の切実な声に、ボクはNOとは言えなかった。
あまりのショックにボクが固まっていると、追いかけてきた唯ちゃんがボクの後ろから玄関を眺めた。
「なあに? そのブランケット。」
「エッ?」
(やっぱり大人には、ユウくんたちはブランケットに見えるんだ!)
ボクは慌ててユウくんと黒いブランケットを両脇に抱え込んだ。
「に、2枚ともボクのブランケットだよ。
ここに来る道で落としたのを、親切な人が拾って届けてくれたみたい!!」
「よくここが分かったわね。」
「それはえーと、タクシーの運転手さんだからだよ!」
「ああ、タクシーの車内に忘れたのね。もしかして、外に出ようとしたのはコレを探すためだったの?」
力強く何度も頷くボク。
「ならよかった。
今日は天気が荒れるから、家を出ちゃダメよ。」
唯ちゃんはボクの説明に納得した顔をして居間に戻っていった。
まだ胸のドキドキが止まらない。
ユウくんはボクに得意げに囁いた。
「ね、言った通りだ。
やっぱり大人にはユウくんが見えないでしょ?」
ボクは深呼吸をしてからユウくんに向き直った。
「ユウくん、太陽先輩がブランケットになった状況を、詳しく説明できる?」
「えっと・・・それは本人から聞いたらいいんじゃないかな?」
「本人に?」
その時ボクの手に、黒いブランケットから生暖かい息が漏れた。
「おい、古明地! どうなってんだ、この体‼」
「ヒィッ!」
突然のハスキーな声に驚いたボクは、黒いブランケットを廊下に投げ捨ててしまった。
「いって―な、乱暴に扱うなよ!」
(痛いの⁉)
驚きすぎて言葉が出ないボクに代わって、ユウくんが飄々と黒いブランケットを拾い上げた。
「へえ、喋れるんだ?」
「当たり前だ!」
ボクは顔を覆った両手の隙間から、2人(?)を見つめた。
(どうなってるかなんて、こっちが聞きたいよー!)
「あ、そうか。ブランケットが喋るんじゃなくて、ブランケットの声が聴こえる人が居るってことか。」
張り詰めた空気の中、ユウくんだけが納得してニコニコしているけど、ボクには意味が分からない。
もう、色々起こりすぎ!
夢なら醒めて!!
※
とりあえず子供部屋に移動したボクらは、慎重に学習椅子の背に太陽先輩を掛けた。
これって痛くないかな?
「ふぅ~。やっと落ち着けるぜ。」
男らしい顏が浮かぶようなハスキーな声。
どう見てもブランケットにしか見えないのに、不思議。
ユウくんとボクは椅子と正対するベットの端に腰かけて、話を切り出した。
「あの・・・それで、先輩がブランケットになった時のことを詳しく話してくれませんか?」
太陽先輩は少し怒った口調で話し始めた。
「古明地を追おうとしたらコイツが邪魔するから、平手で胸をどついたんだ。」
「そうそう、ドン、ってどつかれた。」
ユウくんが無邪気に相づちを打つ。
先輩の声のトーンがどんどん暗くなる。
「そしたら、心臓が急に苦しくなって、動けなくなった。」
「うんうん。急に胸を押さえてうずくまった。」
「で、気づいたら俺は黒い布切れになっていて、コイツに拾われてここまで来た・・・。」
「チッチッチ。布切れじゃなくてさー、ブランケットって言うんだよ。」
大人しく太陽先輩の話を聞いていたユウくんが、急に大きな声を出した。
「僕も実はブランケットだったの。生まれながらのね♪」
太陽先輩が驚いたように呻いた。
「え、オマエはなんで人間になったの?」
「その理由を探すために、ボクたちはここに来たんだ♪
だからー、みんなでなかよくしよーね♡」
いつものんきなユウくんの言葉。
でも、今はすごく救われる気がする。
ボクはとりあえず気持ちを落ちつけて、太陽先輩に話しかけることにした。
「えっとまず、このユウくんの言っている話は本当のことです。
太陽先輩が変身した理由はよく分からないけど、ユウくんの変身の謎が解ければ解決するかもしれない・・・と思います。」
ひと呼吸置いてから太陽先輩が質問してきた。
「で、解決できそうなの?」
「それが・・・。」
ボクが今までのことーーーおばあちゃんの木のボビン糸でユウくんを縫ったこと、自称魔女のおばあちゃんのことを調べようとしていることをかいつまんで話すと、太陽先輩は唸り声をあげた。
「魔女? 魔法? でも、俺には糸は関係ないだろ。だいたい、縫われてねーし。」
「そうなんですよね・・・。」
ボクはそれ以上、何も言えなくてうつむいた。
(もう頭がいっぱい過ぎて、言葉が出てこないよ!)
その時、隣に座っていたユウくんが急に立ち上がって大きな声を出した。
「まだココに来たばっかりで、何も調べてないんだから、これからだよ。
1人で悩むより、みんなで考えたほうが絶対に解決するから。
太陽も一緒に謎を解き明かそうよ!」
「・・・まぁ、そうだな。
古明地、オマエもわけが分からないのに責めたりしてゴメン。」
「あ、いえ。大丈夫です。」
意外すぎる。
苦手な太陽先輩に謝られると思ってなかったボクは、ビビリながら頭を下げた。
ユウくんはニコニコしながらおもむろに、太陽先輩の肩を組んだ。
「さぁ、仲良しになるためにはコレしかない! みんなでくるまろー‼」
「え。」
「は?」
黒いブランケットでボクの体を包み込んだユウくんは、そのままボクを抱きしめた。
2枚のブランケットの柔らかくて温かい感触に包まれたボクは、蕩けるような極上の気持ち良さを感じた。
(うわぁ、ふわふわであったかい!)
「なっ、何するんだよッ!」
ボクとユウくんに挟まれた黒いブランケットの生地の表面が、急に固くなった気がした。
ユウくんは黒いブランケットを優しく撫でた。
「リラックス・リラックスー! 萌音にくるまると、気持ちがいいでしょー?」
「おまっ・・・やめろ、俺は男だぞ!
それに古明地だって恥ずかしいだろ!!」
(た、たしかに、そうかも!)
勝手に癒されていたボクは、急に現実の太陽先輩を思いだして体が火照った。
(でも、今の太陽先輩なら・・・大丈夫なんだけど。)
ユウくんは意味がわからないというように呆れた顏で両手を上に向けた。
「なに言ってんの。
僕も男のコだけど、くるまるのに男とか女とかは関係ないよ。」
「人間には関係あるの!
ったく、わけわからん! 古明地、コイツの暴走を止めてくれ!!」
「萌音はね、いつも僕にくるまってるよ♪」
「なんだと・・・!?」
耳元でギャーギャーうるさい2人にくるまれながら、ボクはなぜか幸せな気分になっていた。
※
次の日の朝、ボクはおばあちゃんの作業部屋の掃除をするという体で唯ちゃんに離れの鍵を借りた。
「じゃあ、みんなでおばあちゃんの家を捜索しよう。」
ボクは肩に太陽先輩を羽織って段ボールを一つ一つ開けていった。
糸の歴史が分かる日記とか手帳みたいなのがあるといいなと思ったけど、そういうものは見つからなかった。
その代わりに裁縫に使う生地やボタンが大量に出てきた。
(ボクや唯ちゃんにこれを有効利用できる能力があればなぁ。)
もったいないなと思いながら、ボクは段ボールの蓋を閉じた。
「これだけ探してないなら、探す視点を変えたほうがいいかもしれないな。」
お昼近くなって、ボクの肩の上で太陽先輩が呟いた。
「視点? どうやってですか?」
「まず、確かめたいことがあるんだけど・・・魔法の糸は今どこにあるんだ?」
「あ、ココにあります。」
ボクはポケットから木のボビンに巻かれた魔法の糸を取り出した。
「よし。これを古明地のおばさんに渡して、布を縫ってもらうんだ。」
「ええっ⁉」
物置から最後の段ボールを離れの前に運んだユウくんが、楽しそうに目を輝かせた。
「太陽、頭イイね! そしたら仲間が増えるから、謎が解決しやすくなる‼」
(じ、冗談でしょ?)
ボクは身震いして首を振った。
「ムリ! これ以上登場人物が増えたら、ボクの神経が持ちませんッ!」
「目的は仲間を増やすことじゃない。」
すぐに太陽先輩がフォローした。
「俺の考えではたぶん・・・いや、それはあとで話すか。
とりあえず古明地のおばさんに、糸を布に縫いつける作業を頼めないか?」
太陽先輩の切実な声に、ボクはNOとは言えなかった。



