「ま……待て! 僕はまだ彼女との婚約を破棄していない!」
「……何を言ってるんですか、兄上。彼女は受け入れると言った。破棄は成立しましたよ。チェルシー嬢と婚約をなさるのでしょう」
「ま、待ってくれ……僕はどうやら頭がおかしくなっていたようなんだ」
え……なんでそうなったの。いや、レヴィアスも正直、ノーセンキューだけど。エス寄りだし……ゲームならまだしも、リアルならどっちもいらないわ。
「そうですね。頭がおかしくなった兄上よりも私の方が王位に相応しいと、ここにいる誰もが思ったことでしょう。そして彼女こそが――」
「違う! 何か大きな力に洗脳されていた気がするんだ。今、正気に戻った。皆もすまなかった。頭を冷やしたい。もう少し冷静に考えてみようと思う。僕の今日の言葉は全てなかったことに――」
「兄上、それは虫が良すぎるというものだ」
グダッグダだな。周りの貴族の人たちもヒソヒソ話をし始めた。
とりあえず婚約破棄を言い渡すところまではゲームのシナリオ通りだった。私が変なことを言ったことで、おかしな方向に?
「静粛に」
壇上から威厳のある声が響いた。国王陛下だ。
「どうやら私たちは皆、悪いものに憑かれていたようだな。今宵は夢。何が起きてもおかしくはない夢だ。この地をお創りになられた神が、記念すべきこのパーティーの日に私たち全員に不思議な夢を見せたのかもしれないな。全てを忘れ、今宵は踊ろうではないか」
場が鎮静化する。
え、夢ってことになっちゃうの? なかったことにしちゃうの?
うわぁ……王妃様の顔が能面のようだ。彼女にも愛人がいるものの、色々と思うところがあるのだろう。
レヴィアスが短くため息を微かにつくと、私に嘘くさい微笑みを向けた。
「私と踊っていただけますか、レイナ嬢」
ダンスへと私を誘う。
「……よろこんで」
どうしよう、これ……。まとまったようで何もまとまっていないでしょ……。
苦虫を噛み潰したような顔のアーロンと、だんまりになってしまった放心状態のチェルシーを横目に、楽団の音楽に合わせて彼とダンスを踊る。レイナのこれまでの記憶や知識もあるので、ダンスも体が覚えているようだ。
結局、婚約は破棄されたの!?
されてないの!?
何もかも分からないまま、私はレヴィアスにエスコートされつつこの夜を過ごした。
「……何を言ってるんですか、兄上。彼女は受け入れると言った。破棄は成立しましたよ。チェルシー嬢と婚約をなさるのでしょう」
「ま、待ってくれ……僕はどうやら頭がおかしくなっていたようなんだ」
え……なんでそうなったの。いや、レヴィアスも正直、ノーセンキューだけど。エス寄りだし……ゲームならまだしも、リアルならどっちもいらないわ。
「そうですね。頭がおかしくなった兄上よりも私の方が王位に相応しいと、ここにいる誰もが思ったことでしょう。そして彼女こそが――」
「違う! 何か大きな力に洗脳されていた気がするんだ。今、正気に戻った。皆もすまなかった。頭を冷やしたい。もう少し冷静に考えてみようと思う。僕の今日の言葉は全てなかったことに――」
「兄上、それは虫が良すぎるというものだ」
グダッグダだな。周りの貴族の人たちもヒソヒソ話をし始めた。
とりあえず婚約破棄を言い渡すところまではゲームのシナリオ通りだった。私が変なことを言ったことで、おかしな方向に?
「静粛に」
壇上から威厳のある声が響いた。国王陛下だ。
「どうやら私たちは皆、悪いものに憑かれていたようだな。今宵は夢。何が起きてもおかしくはない夢だ。この地をお創りになられた神が、記念すべきこのパーティーの日に私たち全員に不思議な夢を見せたのかもしれないな。全てを忘れ、今宵は踊ろうではないか」
場が鎮静化する。
え、夢ってことになっちゃうの? なかったことにしちゃうの?
うわぁ……王妃様の顔が能面のようだ。彼女にも愛人がいるものの、色々と思うところがあるのだろう。
レヴィアスが短くため息を微かにつくと、私に嘘くさい微笑みを向けた。
「私と踊っていただけますか、レイナ嬢」
ダンスへと私を誘う。
「……よろこんで」
どうしよう、これ……。まとまったようで何もまとまっていないでしょ……。
苦虫を噛み潰したような顔のアーロンと、だんまりになってしまった放心状態のチェルシーを横目に、楽団の音楽に合わせて彼とダンスを踊る。レイナのこれまでの記憶や知識もあるので、ダンスも体が覚えているようだ。
結局、婚約は破棄されたの!?
されてないの!?
何もかも分からないまま、私はレヴィアスにエスコートされつつこの夜を過ごした。



