「世界中が敵になっても味方になってくれるらしいわって嘲笑っていたわよね」
「い……言ってない、言ってないわ! アーロン様、信じて!」
「一生の間ずっと幸せな人間なんていない、今幸せというだけで十分だとかなんとかでしたかしら。刹那的な思考ですわね、アーロン様? 彼の言葉をベラッベラと人に話すのはさすがに品性に欠けるわ。私が苦言を呈するのは当然かと」
「チェルシー……お、前……」
「ちが! ちょ、あんた! 違うの、アーロン様!」
必要以上にチェルシーが取り乱している。より怪しく見える。可哀想に……彼女はシナリオ通りに進んで今日を迎えただけだろうに。
彼の印象的な台詞を覚えていてよかった。どうやらここでも、ゲームのアーロンルート通りに進んでいたらしい。二人きりの時に自分が吐いた台詞を私が知っている。チェルシーに疑いの目を向けさせるだけなら、それだけで十分でしょう。
話しながら頭をフル回転させる。
う……ん、これで婚約破棄の理由が曖昧になって、破棄をやめてもらっても困るわね。ヒロインに恋した男がいきなり私を好きになるわけがないし……断罪イベントを起こしたこの男との先にいい未来があるとは思えない。夢かもしれないけど、それも避けなくては。
「でもね、チェルシーさん。私はずっと、あなたとアーロン様が上手くいきますようにと願っていたのよ。苦言を呈したのも、アーロン様に相応しい方になってほしくてだったの」
「はぁ!? 意味が分からないわ。いきなり何よ。あんた、アレね。あんたも転生――」
転生!?
話をややこしくさせないためにも、急いで彼女の元へ駆け寄ると手を握りしめた。畳み掛けるように矢継ぎ早に彼女を褒める。
「あなたはとても可愛らしいわ! きっと民も歓迎してくれる。学業の成績も悪くはないものね。大丈夫、アーロン様の婚約者に相応しいのは、あなたよ」
「え、な……」
彼女の耳元でそっと囁く。
「誰かを不幸にすることで掴み取る幸せは、長続きしないわ」
「――!」
さっき彼女は転生と言いかけた。ということは、私より早くこの世界に来たのかもしれない。
「い……言ってない、言ってないわ! アーロン様、信じて!」
「一生の間ずっと幸せな人間なんていない、今幸せというだけで十分だとかなんとかでしたかしら。刹那的な思考ですわね、アーロン様? 彼の言葉をベラッベラと人に話すのはさすがに品性に欠けるわ。私が苦言を呈するのは当然かと」
「チェルシー……お、前……」
「ちが! ちょ、あんた! 違うの、アーロン様!」
必要以上にチェルシーが取り乱している。より怪しく見える。可哀想に……彼女はシナリオ通りに進んで今日を迎えただけだろうに。
彼の印象的な台詞を覚えていてよかった。どうやらここでも、ゲームのアーロンルート通りに進んでいたらしい。二人きりの時に自分が吐いた台詞を私が知っている。チェルシーに疑いの目を向けさせるだけなら、それだけで十分でしょう。
話しながら頭をフル回転させる。
う……ん、これで婚約破棄の理由が曖昧になって、破棄をやめてもらっても困るわね。ヒロインに恋した男がいきなり私を好きになるわけがないし……断罪イベントを起こしたこの男との先にいい未来があるとは思えない。夢かもしれないけど、それも避けなくては。
「でもね、チェルシーさん。私はずっと、あなたとアーロン様が上手くいきますようにと願っていたのよ。苦言を呈したのも、アーロン様に相応しい方になってほしくてだったの」
「はぁ!? 意味が分からないわ。いきなり何よ。あんた、アレね。あんたも転生――」
転生!?
話をややこしくさせないためにも、急いで彼女の元へ駆け寄ると手を握りしめた。畳み掛けるように矢継ぎ早に彼女を褒める。
「あなたはとても可愛らしいわ! きっと民も歓迎してくれる。学業の成績も悪くはないものね。大丈夫、アーロン様の婚約者に相応しいのは、あなたよ」
「え、な……」
彼女の耳元でそっと囁く。
「誰かを不幸にすることで掴み取る幸せは、長続きしないわ」
「――!」
さっき彼女は転生と言いかけた。ということは、私より早くこの世界に来たのかもしれない。



