敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

そのとき——。

「木崎さんも、資料作りと発表を手伝ってくれてありがとうね。あなたのおかげよ」

微笑みながら、村上さんが私にそう言った。

頭の中が真っ白になった。どうしてそんなことが平然と言えるんだろう。

私の努力を「手伝い」として片付けながら、すべてを自分の功績のように語る彼女に、怒りがじわじわと湧き上がる。

「とんでもないです」

無理にでも笑うことすらできなかった。無感情にその一言を出すことで精一杯だった。

その瞬間、周囲の空気がわずかに重くなる。誰かが、気まずそうに視線を逸らした。

けれど、そんなことすら、もうどうでもよかった。

目の前の資料に視線を落とすけれど、指一本動かす気になれなかった。普段なら、次のタスクに取りかかることで気を紛らわせることができるのに。

——これが仕事なんだから、仕方ない。今までもそう思ってきたはずだ。

そう自分に言い聞かせるけれど、その言葉は、ただ虚しく響くだけだった。

割り切ろうとしても、割り切れない。
胸の奥で広がっていく負の感情を、私はもう、止めることができなかった。