敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

「敬語もやめていいよ」

耳元で囁かれ、びくっと肩が跳ねた。

「え、そ、それは……」
「恋人なのに敬語って、距離感じる」
「で、でも……急には……」
「じゃあ、名前から」

クスッと笑った彼が、そっと私の髪を梳く。

「俺のこと『柊真』って呼んで?」
「……っ」

そんなの、急に呼べるわけない。

「茉莉?」

じっと見つめられると、逃げ場がなくなる。

「……柊真、さん……」

精一杯、私のできる限りで彼の名前を呼ぶ。
彼はしばらく私を見つめて——ふっと微笑んだ。

「……まぁ、今はそれでもいいか」

優しく囁く声が、どこか満足げで。
そのまま、もう一度、深く口づけられた。ゆっくりと、でも確実に私を飲み込むような熱を孕んだキス。

指先がそっと頬をなぞり、髪を梳くように撫でながら、彼の舌が躊躇いがちに触れてくる。

熱が、体の奥まで染み込んでいき、思わず掴んだ彼のシャツの生地が、ぎゅっと指の中で皺になる。

「もうやめる?」

強ばった身体を感じたのか、藤堂さんが優しく尋ねる。その声さえ熱く感じてしまって私はギュッと目を閉じた。

「……や、やめない……です」

なんとかそう答えると、彼は満足そうに微笑んだ。

「そっか。じゃあ、もう少し」

囁くように言った彼の唇が、今度は頬へ、耳元へと降りてくる。
熱い吐息が、肌を撫でるたびに、体の奥がふわふわと浮かぶような感覚に包まれる。

「茉莉、可愛い」

少し意地悪な笑みを浮かべながらそう言う彼に、思わず抗議しようとしたけれど——

「よし、明日も仕事だから、おやすみ」

そう囁いて、今度こそ彼は静かに唇を離した。
名残惜しさと、甘やかな余韻が残る唇。

「……おやすみなさい」

胸がぎゅっと締めつけられるような気持ちを抱えたまま、私は布団に潜り込んだ。