敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

その日の業務が終わった後も、心のざわつきは収まらなかった。
藤堂さんのいる家に帰るのが、どうしても気が進まない。

一足先に会社を出た私は、夕暮れの街をあてもなく歩き続けた。明るいショーウィンドウの光や行き交う人々の楽しそうな声が、心に余計な孤独感を突きつける。

「どうして、私ばっかり……」

藤堂さんなら信じてくれると思っていた。
優しくて冷静なあの人だけは、私の味方でいてくれると信じていた。

でも、それは私の一方的な期待だったことを痛感した。
恥ずかしいような、悲しいような、耐えられない気持ちに押しつぶされそうになる。

「よ」

肩を落としたそのとき、背後から聞こえた声に全身が凍りついた。

「こんなとこでふらふらして、帰る場所でも無くした?」

そこには京介がいた。まるで全てを見透かすように、ニヤリと口元を歪めて私を見下ろしている。

「京介……」
「ほら、言っただろ?お前みたいな女に優しくするやつなんていないんだよ」

その言葉に、胸が強く締めつけられる。喉が震え、声が出なかった。

「どれだけ期待しても傷つくだけだ。俺と居たらそんな不安なくなる。お前のそういう弱い部分も理解してやってる。……ほら、帰ろうぜ」

――何もかも見透かされているような言葉が、心の奥深くに突き刺さる。