敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

優しかった京介が変わり始めたのは、彼の仕事がうまくいかなくなった頃からだった。

言葉も行動も、とげとげしくなり、以前の穏やかな彼はどこかに消えてしまった。

最初はその態度にむっとして、私も言い返していた。

怒った京介は、口を利いてくれない日もあれば、不意に謝り、抱きしめてくる日もある。
気分次第の彼の行動に、私は流され振り回されて、気付けば疲弊してしまっていた。

そして、彼の態度が次第に強くなるにつれ、涙が止まらない夜が増えていった。物に当たる音や荒々しい仕草が脳裏に焼きつき、その記憶を思い出すたびに背筋がひやりと冷たくなる。

京介に言われたとおり、リビングの電気を消し、小さな常夜灯の光を頼りに散らかったゴミを片付ける。虚しさと情けなさが押し寄せてきて、唇を噛み締めた。

気づけば、今の私はもう言い返す気力すらなくなっていた。反論すれば、もっと関係が悪くなる気がして怖かった。結局いつも「ごめんね」と謝ってしまう。それが、彼の機嫌を少しでも良くする唯一の方法に思えていたからだ。

要領の悪い私が、仕事で疲れた彼を癒すことができなかったから。私のせいで彼が変わってしまったのだ――そんな自己嫌悪が胸の奥を締めつける。

でも、どこかにかすかな期待も残っている。もう一度、彼があの頃の優しい京介に戻ってくれるかもしれない――そんな儚い希望を、私は捨てきれなかった。いや、そこにしか縋る場所がなかったのかもしれない。

片付けを終えたリビングは少しだけ整い、見た目はきれいになった。でも、それで満たされるものなんて何もなかった。