彼は昔からそうだった。
甘い言葉と頼もしげな態度で私を惹きつけながら、その裏で私の自由を少しずつ奪っていった。
それに気づいたのは、別れた後のことだったけど。
「京介、もうやめて」
声が震えたのが自分でもわかった。彼の表情がほんの一瞬、苛立ちに歪むのが見える。
「まさか、お前、もう他に男でもできたの?」
明らかに変わった空気に心がざわつく。小さく首を振ろうとしたけれど、その瞬間、自然と頭に浮かんだのは藤堂さんの顔だった。
彼は恋人でもなんでもない。
それどころか、私のこんな気持ちが伝わることもないかもしれない。それでも間違いなく、どん底に沈んでいた私を拾い上げてくれた人だった。
「……ふーん」
京介が何かを察したように目を細める。
「そっか、なるほどね。でもな茉莉、世の中はそんなに甘くない。都合よく優しい男なんていないんだよ」
「どうせ、怖いんだろ」
「また一から人を信じるのが」
「俺にしとけばいいのに」
続け様に放たれたその言葉が、鋭く胸に突き刺さった。
確信を持つことを恐れ、ただ流されるように藤堂さんの隣にいる自分。そんな弱さを見透かされたようで、彼の言葉は痛いほど的を射ていた。
「騙されて泣きついてきても、俺は知らないからな」
そう言い放ち、京介は席を立った。去り際にちらりと振り返ることもなく、彼は居酒屋を出て行った。
私はその背中を見送ることしかできなかった。
京介の言葉がまだ胸の奥でくすぶっている。
不快感と痛みがごちゃ混ぜになって心を支配していた。
甘い言葉と頼もしげな態度で私を惹きつけながら、その裏で私の自由を少しずつ奪っていった。
それに気づいたのは、別れた後のことだったけど。
「京介、もうやめて」
声が震えたのが自分でもわかった。彼の表情がほんの一瞬、苛立ちに歪むのが見える。
「まさか、お前、もう他に男でもできたの?」
明らかに変わった空気に心がざわつく。小さく首を振ろうとしたけれど、その瞬間、自然と頭に浮かんだのは藤堂さんの顔だった。
彼は恋人でもなんでもない。
それどころか、私のこんな気持ちが伝わることもないかもしれない。それでも間違いなく、どん底に沈んでいた私を拾い上げてくれた人だった。
「……ふーん」
京介が何かを察したように目を細める。
「そっか、なるほどね。でもな茉莉、世の中はそんなに甘くない。都合よく優しい男なんていないんだよ」
「どうせ、怖いんだろ」
「また一から人を信じるのが」
「俺にしとけばいいのに」
続け様に放たれたその言葉が、鋭く胸に突き刺さった。
確信を持つことを恐れ、ただ流されるように藤堂さんの隣にいる自分。そんな弱さを見透かされたようで、彼の言葉は痛いほど的を射ていた。
「騙されて泣きついてきても、俺は知らないからな」
そう言い放ち、京介は席を立った。去り際にちらりと振り返ることもなく、彼は居酒屋を出て行った。
私はその背中を見送ることしかできなかった。
京介の言葉がまだ胸の奥でくすぶっている。
不快感と痛みがごちゃ混ぜになって心を支配していた。



