敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

そのとき、静まり返っていたリビングに脱衣所の扉が開く音が聞こえた。

だらしなくソファに倒れ込んでいた身体を反射的に起こした私は、手の届く範囲にあるコンビニのゴミを慌てて片付け始める。

リビングに入ってきた彼は何も言わず冷蔵庫を開けた。そして、中を覗き込んだまま、振り返りもせず低い声が呟かれた。

「あのさ、洗濯物くらい朝回せない?」

また嫌味を言われるだろう――そう覚悟はしていた。それでも、その一言に胸がズキンと痛む。

「……ごめん」

消え入りそうな声で謝ると、彼は一瞬だけ振り返った。その目には、抑えきれない苛立ちが滲んでいた。

「冷蔵庫にも何もないし。朝も昼も夜もコンビニ弁当だよ。さすがに飽きるわ」

嫌味たっぷりに吐き捨てる彼に、私は何も言い返せなかった。
しばらく冷蔵庫の前から冷たい視線を向けていた彼は、やがてまたため息をつく。

「……もういい。寝る。灯り鬱陶しいからリビングの電気消して」

冷たくそう言い残し、寝室の扉をバタンと閉めた。

残された私は、小さく震える息を吐くしかなかった。ソファに崩れ落ちるように腰を下ろし、頭を抱える。