敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

俺はそれ以上何も言わず、頭を掻きながらテーブルの上を指さした。

「とりあえず、その山みたいな資料、俺も手伝う。どこからやればいい?」
「え?」

木崎は驚いたように目を丸くしたが、すぐにふわりと笑った。

「そんな、いいです。藤堂さんだって忙しいんじゃ――」
「いいから」

少し強引に言うと、彼女は言葉を飲み込む。

「木崎の仕事を少しでも楽にするのが、今の俺の仕事ってことにしよう」

そう言って資料を手に取ったものの、すぐに手順を間違え、木崎が慌てて直す羽目になる。

「あ、違う、こっちが先で……」
「え、マジか」

二人の間に自然と笑い声が生まれ、リビングには温かな空気が広がっていった。

「キリが着いたので、そろそろご飯にします!手伝ってくれてありがとうございます」

やがて木崎が立ち上がり、キッチンへ向かう。
その背中を見つめながら、胸に広がる感情をそっと飲み込む。

ただ一つ確かなのは――
ただの同居人だったはずの彼女が、いつの間にか俺の心を占めているということだった。