敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

「私が未熟なのは分かってます。会社ってそういうものだし」
「未熟?」

俺は眉を寄せ、思わず問い返した。

「これだけのことをやって未熟だなんて言ったら、世の中の大半のやつは仕事にならないよ」

急に熱くなった俺に、木崎は困ったように肩をすくめる。その仕草に、胸の奥がざわついた。

彼女は「未熟」なんかじゃない。むしろ、どこに出しても通用するレベルだ。なのに、その実力を正当に評価されず、本人もそれを受け入れてしまっている。

「木崎」

低い声で名前を呼ぶと、彼女が小さく瞬きをする。

「謙虚なのはいいけどもっと自分の価値をわかってほしい。木崎のその丁寧さや真面目さは、もっと評価されるべきだ」
「でも、私……」

言いかけた言葉を、彼女は飲み込んだ。
自分を正当化するのが苦手なのか、視線を落としてペンをいじる指先が落ち着きなく動く。俺はそんな彼女を見つめ、はっきりと告げた。

「俺にはわかるよ。どれだけ頑張ってるか、どれだけ見えないところで努力してるか」

木崎の手が止まり、驚いたように俺を見る。

「誰が評価しなくても、俺はちゃんと見てる」

その言葉が、彼女にどう届いたのかはわからない。でも、ほんの少しだけ、木崎の頬が赤くなった気がした。

「……ありがとうございます」