敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

そんな中、藤堂さんの手がふと止まった。

「……?」
「……」

じっと見つめられている気がして、そっと顔を上げる。
すると、タオルの隙間から伸びた彼の指が、私の頬にかかっていた前髪をそっと払った。

その仕草があまりに優しくて、思わず息を飲む。

「糸くず、ついてた」

静かな声とともに、彼の指先には小さな糸くず。
それだけなら、ただの些細なやりとり。
なのに、藤堂さんはそのまま、指で私の頬をかすめるように撫でた。

「っ……!」

――なにこれ、近い、近すぎる。

顔が一気に熱を持つのを感じる。
視線をそらそうとしても、すぐ目の前に彼の顔があって、どこを見ればいいのかわからない。

そんな私の様子に気づいたのか、藤堂さんの指が一瞬止まり、ふっと低く笑う音がした。

「そんな顔されると、なんか、悪いことしてるみたいだな」
「っ……!!」

――悪いことしてるのはどっちですか!!
声にならない声を発して睨みつける。

「はい、大体乾いた。ドライヤーしておいで」

何事もなかったようにタオルを外して、軽く髪を整えてくれる藤堂さん。
けれど、その指先の感触が残っているせいで、私はまともに動くことができなかった。

「ほら、ぼーっとしてると、風邪ひく」
「っ、はいっ!」

慌てて立ち上がり、脱兎のごとく洗面所へと駆け込む。
けれど、鏡に映った自分の顔が驚くほど赤くて、ドライヤーを手に取る手が震えた。

――ただの優しさ、ただの……

そう言い聞かせても、藤堂さんの声が頭の中でリピートされて、高鳴る胸はどうしようもなかった。