敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

お風呂上がり、リビングに戻ると、藤堂さんはダイニングデスクで仕事をしていた。

私は濡れた髪をざっくりまとめながら、邪魔をしないようソファに腰を下ろす。

そのままスマートフォンを手に取り、何をするでもない無意味な時間を過ごしていたら、椅子を引く音がした。

「木崎、髪濡れたままだと風邪ひくよ」
「えっ、大丈夫です!すぐ乾かしますから!」

だらしなく過ごしてしまっていた自分が急に恥ずかしくなり、慌てて言い訳する。

彼はため息混じりに立ち上がると、クローゼットからタオルを取り出して戻ってきた。

「ほら」
「えっ、あ、すみません、自分で――」

言い終わる前に、ふわりとタオルが私の頭にかけられた。
それだけじゃなく、大きな手がタオル越しに優しく髪を包み込み、ぽんぽん、とリズムよく押さえるように拭いてくれる。

「ちょ、藤堂さん、さすがに……っ!」

思わず身を引こうとすると、その動きを読んでいたかのように、すっと背後に回り込まれた。
ふんわりとシャンプーの香りが混ざった空気の中、彼の低い声がすぐそばで響く。

「じっとしてて」
「え……」

耳元で囁かれるように言われて、心臓が跳ねる。
いつもは淡々としているのに、今の声は妙に優しくて、少しくすぐったい。

ごしごしと拭かれるわけでもなく、ただ撫でるようなタオルの動きに、だんだんと体の力が抜けていく。