敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

玄関先で待っていた藤堂さんは、普段のスーツ姿とはまるで違う装いだった。

黒いシャツにジャケット、シンプルなスラックス。無駄のない洗練されたスタイルが、彼の端正な顔立ちをさらに引き立てている。

「お待たせしてすみません!」
「いや、大丈夫。準備できたなら行こう」

彼に促され足を踏み出そうとしたけれど、思わず立ち止まってしまった。

「どうした?」
「……あの、藤堂さん、おしゃれですね。私、全然おしゃれな服がなくて……」

つい口に出してしまったものの、恥ずかしさに耐えられず視線を落とす。

玄関の姿見に映った私の服装は、いつも通りのオフィスカジュアル。シンプルなスカートとブラウスが、いつも以上に味気なく感じられた。

藤堂さんはそんな私を見て、優しく目を細める。

「木崎のそういうところ、らしくていいと思うけどな」
「え……」
「無理に着飾らなくても、そのままで十分魅力的だよ」

さらっと言われた言葉に、思わず心臓が跳ねた。
何も言うことが出来ず、ただその場で下を向く。

「……でも、気になるなら、せっかくだし服でも見に行く?」

困ったように頬を掻きながらも、どこか楽しげに微笑む彼に、断る間もなく手を引かれ、私たちは家を出た。