敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

次の休日、私は軽く手を叩いて藤堂さんの仕事部屋を見回していた。

「さて、始めましょうか!」

物がほとんどなく、無機質なリビングとは対照的に、彼の部屋は生活感と仕事道具で溢れていた。

足元に転がるコードや床一面に散らばるファイル。それを目にして、私は密かにやる気を燃やしていた。

「無理しなくていいからな。本当は俺が普段から片付けておくべきなんだから」
「大丈夫です! 私、本当に得意なんですよ」

手始めに、散らばったコードをまとめることにした。絡まったコードを一つずつ丁寧に解き、持参した結束バンドでコンパクトに束ねる。

そして机の後ろに固定し、ホコリが溜まらないよう少し高さを上げる工夫も忘れない。

「おお、すごい。これだけでかなり違う」

藤堂さんが感心したように目を丸くしているのを横目に、次はファイルの整理に取り掛かった。
資料をジャンルごとに分け、ラベルをつけて分かりやすく並べていく。

その姿に、藤堂さんも諦めたように何も言わず散らばった書類に手をつけ始めた。

「木崎、これってどうしたらいい?」
「あー……そこはですね……」

作業は自然と彼との会話を生み、和やかな雰囲気が広がる。
整理を終えた部屋は見違えるほどスッキリしていた。

「どうです? 少しは作業しやすくなりました?」
「……すごい。ここまで変わるとは思わなかった。木崎はいつも机綺麗だもんな……尊敬するよ」

彼が心底感心した様子で言うので、私は思わず吹き出した。

「大げさです。ちょっと整理しただけじゃないですか」
「いやいや、これが“ちょっと”って……。俺、もう絶対これ自分で戻せない……」

冗談めかした彼の言葉には、感謝の気持ちがにじんでいた。その様子に少し照れくささを感じながらも、私は素直に嬉しかった。

「じゃあ、これからは散らかる前に片付けてくださいね」
「……努力する」
なんとも微妙な返事に、私たちは顔を見合わせて笑った。