敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

「あの、大丈夫ですか?開けますよ……!」

思い切ってドアを開けると――そこには驚くべき光景が広がっていた。

机の上には電子機器や充電コードが無造作に積み重なり、散乱した書類が床を埋め尽くしている。
壁一面の本棚は雪崩を起こし、床には無数のファイルや資料が飛び出していた。

思わず目を大きく見開き立ち尽くす。
顔を上げると、固まって立ち尽くす藤堂さんと目が合い、数秒の不自然な沈黙が流れた。

「おい、藤堂? あったのか?」

スマホのスピーカーから男性の声が響く。
藤堂さんはそれを拾い上げ、ため息をつきながら無言で通話を切った。
そして、私に視線を向けて、ぽつりと呟く。

「……見なかったことにしてくれないか」

その頼りない声と少し気まずそうな表情に、思わず笑ってしまう。

「ふふっ、藤堂さん、意外です」
「た、たまたまだ……普段は、もっとマシなんだよ」

彼の慌てた弁解がなんだか可愛らしい。

「分かりました。一緒に探しましょう?触っていい場所を教えてください」

少し驚いたような表情の彼に微笑み返す。
二人で崩れた本や資料を片付けている間に、彼は目的の資料を見つけたらしく、すぐにパソコンを開いた。

私はふと、乱雑に放り込まれた書類の山を見つめながら口を開く。

「藤堂さん、今度の休日、もしよければ整理をお手伝いしましょうか?」

少し遠慮がちに言うと、彼は驚いた顔を見せたが、すぐに首を横に振った。

「いや、そこまでは……」
「でも、このままだと片付け大変ですよね?私実は、片付けとか得意なんです」

見つめると、彼は観念したように息をつき、少しだけ照れたように小さく笑った。

「……頼んでもいい?」

普段から助けられてばかりの彼が、困った顔でこちらを見る。そのギャップが嬉しくて、ほんの少しだけ距離が縮まった気がした。