席に戻ると、村上さんが待ち構えていたかのように、椅子のキャスターを滑らせてやってきた。

「さっきのミーティングでは、藤堂さんのおかげで責任を逃れたみたいだけど、ミスがあったことには変わりないから、ちゃんと確認してよね。私が悪いって思われたら困るでしょう?」

村上さんの攻撃的な声に、私は深く息を吸い込み、頭を下げた。

「はい。申し訳ございません。今から急ぎで確認します」

データの引用は村上さんが担当だったのに……。確認しなかった私も悪いのかもしれないけど……。

心の中で浮かび上がる不満を抑えながら頭を上げる。

「それに……」

村上さんの視線が私を飛び越え、後ろの席の夏目さんへ向かうのを見て、嫌な予感が走った。

「最近、夏目さんの指導が手薄なんじゃない? 後輩にもっと仕事を任せられるようにするのも、あなたの役目でしょう?」

「申し訳ありません……もう少し丁寧に指導します」

次から次へと出てくる文句は、自分の至らなさが原因なのは分かっていても、じわじわと心を黒く染めあげる。

「言い訳は要らないの。夏目さんのミスを隠してるって話も耳に入ってるし。もっと自覚を持ちなさい」

村上さんの声は鋭く刺さり、周囲の視線がこちらに集まるのが分かった。手元の資料をぎゅっと握りしめながら、私は耐えるしかない。