敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

「また君か……」

システム部の上司がため息をつき、私の心は一気に縮み上がる。

「申し訳ございません。すぐに修正します」

慌てて頭を下げると、上司は渋々と頷いた。

「あぁ……頼むよ……」

ほっとする間もなく、村上さんの声が再び鋭く響く。

「修正?それじゃ間に合わないでしょ? 本当に反省してるの?」

怒りに任せた嫌味が追い打ちをかけるように続く。その言葉に周囲の視線が冷たく私に突き刺さるのを感じた。

藤堂さんが目の前にいるのに、惨めで恥ずかしくて顔を上げることもできない。

「木崎さんがミスすると、全体のスケジュールに影響が出るのよ。わかってるの?」

どう対応すればいいのか分からず、俯いたまま言葉を探していると、不意に藤堂さんの低く冷静な声が割って入った。

「あの……木崎さんのミスとは限らないですよね。この資料、元々のデータが不完全だった可能性もあります」

その瞬間、会議室の空気がピタリと止まった。村上さんが何か言い返そうと口を開くが、藤堂さんの視線に遮られた。

「村上さん、念のため元データを再確認していただけますか?」

淡々とした藤堂さんの言葉が、周囲の空気を柔らかく変える。その後、彼は私に向き直り、穏やかな声で言った。

「木崎さんももう大丈夫だから、次の資料を準備してもらえる?」
「……っ、はい」

彼の言葉に促され、私は震える手でPCを操作し始めた。その背中を守られているような安心感に、ほんの少し涙が込み上げそうになった。