敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

その週末で準備を終え、新しい生活が始まった。
私は少し早起きしてリビングで朝食の準備をしていた。

荷物は少なかった。

不必要な家具や家電は一旦実家へと送って、最低限暮らしに必要なものだけを運び込んだ。
一時的な暮らしだし、藤堂さんのお邪魔にならないように。

「おはよう、いい匂いだね」

しばらくすると、寝起き姿の藤堂さんがキッチンに現れる。私は振り返って笑顔を見せた。

「おはようございます。朝ごはん作ってみたんですが、食べられますか?」

テーブルに並べられた卵焼きやおみそ汁に、サラダ。藤堂さんは感心したようにテーブルを見てから椅子に座った。

「凄いな、朝ならこんなの大変だったんじゃない?普段はコーヒーだけで済ませてるし、無理しなくていいからね」

彼の言葉に私は少し眉を下げた。

「私は、ここにいさせていただくだけで助かってるんです。これからは私に作らせてください」
「それは、助かるけど……。無理はしないって約束して。休んでほしくてここに来てもらったのに、無理をさせたら元も子もない」

冷蔵庫を開けて、水を取りだしながら心配そうな顔を向ける彼に、笑顔を見せる。

「大丈夫です!ありがとうございます」
「じゃあ、頂こうかな。美味しそう」

安心した様子の彼は、嬉しそうな笑顔を向けながら箸を持った。子供のような笑顔に一瞬、心が跳ねる。

「あの、今日からですよね……?ウチとの契約」
「ああ、そうだね。だから俺少し先に出るよ」
「はい!あの、よろしくおねがいします!」

爽やかな笑顔で彼はジャケットを羽織って玄関を出ていった。

こうして始まる朝は、これまでの孤独な日々を思うと夢のような時間だった。