敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

「その、元彼さんとは未練はないの?すぐに引っ越したい?」

しばらく何かを考えていた藤堂さんが、ふと静かに口を開いた。
その問いかけに、一瞬戸惑いながらも、私は正直な気持ちを口にする。

「え……はい、それは。顔を見るのも辛いし、できるだけ早くとは思っています」
「そう……。それなら、一旦うちを使うのはどう?」
「えっ?」

思いも寄らない提案に、思わず声が裏返る。
勢いよく藤堂さんに目を向けるけれど、当の本人は平然とその続きを口にした。

「そ、それはその、どういう……?」
「どうしてもキッチンやお風呂は共同になってしまうけど、部屋は空いてるし。少しでも楽になるなら使っていい」

「い、いやいやいや、そんなの迷惑です!」

慌てて否定する私に、藤堂さんは軽く首を振る。

「迷惑なんかじゃない。もちろん、無理強いはしないけど」

そう言いながら、彼は少しだけ困ったような、けれどどこか切なげな表情を浮かべた。

「無理してるのが見てて分かる。自分では気づいてないのかもしれないけど、今のままだと潰れてしまうんじゃないかって心配なんだ」

その言葉に、息が止まる。
常識は関係ないようだった。