やっとの思いで村上さんから解放された私は、逃げるようにオフィスを出た。
「やっと終わったみたい、毎日毎日辞めてほしいよね」「木崎さんももう少し上手くやったらいいのにね」
扉を出るまでの間、ひそひそと囁かれる小声に、私は頬をひきつらせていた。
社員からも要領が悪いと囁かれていることは知っていた。
厄介な御局として知られる村上さんから見事に目をつけられ、後輩の夏目さんには盾として利用される。
それどころか、自分の業務に支障が出るほどの雑用を周りからも受け取って残業が続く毎日だった。
要領が悪いと言われても、言い返すことはできない。
廊下を歩き、たどり着いた昼下がりの給湯室では、いつものように夏目さんが笑顔を振りまいていた。
もうすぐやってくる春を連想させるラベンダーカラーのブラウスに、小ぶりのアクセサリー。
夏目さんが身につけるものは、派手ではないけれど、男性社員の視線を集めるには十分だった。
「夏目さん、ちょっといい?」
「はいっ!どうかしました?」
彼女はいつものように後輩らしい人懐っこい笑顔を向けた。しかし、その目はどこかで話が早く終わるのを期待しているようだった。
小さな仕草からそんな本心を察して立ち止まってしまう自分にまた自信を無くす。
「やっと終わったみたい、毎日毎日辞めてほしいよね」「木崎さんももう少し上手くやったらいいのにね」
扉を出るまでの間、ひそひそと囁かれる小声に、私は頬をひきつらせていた。
社員からも要領が悪いと囁かれていることは知っていた。
厄介な御局として知られる村上さんから見事に目をつけられ、後輩の夏目さんには盾として利用される。
それどころか、自分の業務に支障が出るほどの雑用を周りからも受け取って残業が続く毎日だった。
要領が悪いと言われても、言い返すことはできない。
廊下を歩き、たどり着いた昼下がりの給湯室では、いつものように夏目さんが笑顔を振りまいていた。
もうすぐやってくる春を連想させるラベンダーカラーのブラウスに、小ぶりのアクセサリー。
夏目さんが身につけるものは、派手ではないけれど、男性社員の視線を集めるには十分だった。
「夏目さん、ちょっといい?」
「はいっ!どうかしました?」
彼女はいつものように後輩らしい人懐っこい笑顔を向けた。しかし、その目はどこかで話が早く終わるのを期待しているようだった。
小さな仕草からそんな本心を察して立ち止まってしまう自分にまた自信を無くす。



