敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

夜風が頬を撫でる心地よい時間。

並んで歩く藤堂さんとの距離は、物理的には遠くも近くもない。それなのに、彼の存在が妙に身近に感じられるのが不思議だった。

「今日は本当に大変でしたね」

自然に言葉を口にすると、藤堂さんは「そうだね」と穏やかに頷く。

「藤堂さんがいなかったら、もっと大変だったと思います」
「いや、俺がどうこうしたわけじゃないよ。みんなが頑張ったおかげ」

その謙虚な言葉はとても魅力的に映っていた。
昨晩の印象がそのまま鮮明に蘇るどころか、さらに色濃くなっていく気がする。

「本当に頼りになりました。大きなエラーだったのに落ち着いてて」
「んー、どうだろうね。そう見せてるだけかもよ」

藤堂さんは、照れくさそうに笑う。

「見せてるだけ、ですか?」
「そう。俺だって焦ることはあるし。でも大変なときに俺まで焦ったら、状況はもっと悪くなるだろ?」

その思いやりに満ちた言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなった。

「すごいですね。そんなふうに周りを気遣えるなんて、尊敬します」
「そんなことないよ。木崎さんは褒めるのが上手いね」

柔らかな笑みを浮かべる彼に安堵感を覚えた。

彼が隣にいるだけで、こんなにも心が穏やかになるなんて。
出会って間もない彼だけれど、私はこの人を好きになってしまうかもしれない、と――なんとなくそんな予感がした。