敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

私、木崎(きさき)茉莉(まつり)は、この会社に勤めて6年目の一般社員。

当たり障りのないオフィス服に髪を一つにまとめ、視力のあまり良くない目には大きめの黒縁メガネがかけられる。

これといって目立つところはなく、正直地味な私は、自分に自信があるとは決して言えない性格をしていた。

「あなたの教育が悪いからこうなるのよ。来月からまた新入社員が増えるっていうのに、ちゃんと指導してるの?」
「はい……申し訳ありません」

頭を下げると、村上さんは息をついて続けた。

「本当に分かってるの?あなたたち若い人は、ほんと責任感がないわね。私の時代には考えられなかった」

夏目さんのことから内容のないお説教へと変わっていく話題。始まるととにかく止まらなくなる村上さんの説教は、この6年間、頭が痛くなるほど聞いていた。

オフィスに響き渡るような大きな声の説教に、私は肩身が狭い思いで「すみません」と小声で相槌を続けた。

とはいえ、村上さんの指摘は、完全に的外れとも言えない。実際、私は人を叱るのが得意ではなく、教育に不十分な性格をしていることは自覚していた。

時計の針だけが進み、私の胸の中では時間が止まる。

「こういうことが続くと、周りからも信頼を失うわよ。覚えておいて」
「はい……」

窓の外では小雨が降り続いている。

3月になったというのに、少しも暖かくならない気候は私の心にもどんよりと影を落としていた。