敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

そっとベッドを降り、静かにドアを開けてリビングへ向かう。

そこには、ソファに横たわる彼の姿があった。掛け布団を体に巻きつけるようにして、静かに眠っている。

――昨夜、私をベッドに寝かせて、自分はここで休んだんだ……。

その気遣いに気づき、胸の奥がじんわりと熱くなる。
彼の乱れた髪や無防備な寝顔は、どこか少年のようで、しばらく目を離せなかった。

昨夜、私をそっと包み込んでくれた腕の温もりが、ふと脳裏をよぎる。何も問わず、ただ寄り添うようにしてくれた優しさ。

どこの誰なのかも分からないけれど、こんな風に誰かに手を差し伸べられる人がいるのだと思うと、不思議と涙がこみ上げそうになる。

ふと視線を落とすと、リビングのテーブルには空になったコンビニの弁当容器やペットボトルが散らかっていた。

先程までいた寝室を含め、部屋全体が驚くほど整然としているだけに、それらの生活感が妙に際立って見える。

知らず知らずのうちに、手が動いていた。空き缶を拾い、テーブルを整え、床に散らばっていたものを片付ける。

――こんな気持ち、久しぶりかもしれない。

これまでは、部屋を片付けるのもただの義務感でしかなかった。日々をやり過ごすための行為。

それが今は違う。誰かのために動いている。そのことが少しも嫌ではなくて、それどころか、自分自身が癒されているような気がする。