敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

翌朝、ふわりとした光がまぶたを温めるように差し込み、私はゆっくりと目を覚ました。

――ここは……?

目の前に広がる光景に、一瞬、思考が止まる。

知らない天井にふかふかの寝心地の良いベッド。カーテンの向こうから差し込む朝日は、部屋全体を優しい色に染めている。

自分の部屋ではない――それだけははっきりしていた。

ぼんやりとした頭を押さえながら、ゆっくりと身を起こし、周囲を見回す。

ベッドサイドには、昨夜濡れた服が綺麗に折りたたまれて置かれている。その丁寧さに胸が少し締めつけられるような気持ちになった。

昨夜――そうだ、私は雨の中を歩いていて……。

記憶の糸を手繰り寄せるように、断片的な光景が頭に浮かぶ。

激しく降る雨の中、どうしようもなくなって路地に座り込んだこと。傘を差した男性が声をかけてくれたこと。そして、そのまま彼に連れられて……。

ここはきっと、あのときの彼の家なのだろう。

「助けてくれたんだ……」

記憶が繋がると、胸の奥がじんわりと温かくなった。
もし、あのまま彼と会わなければ、どうなっていただろう……。

思い返せば、昨日の自分はどうしようもない絶望に囚われていた。どこにも行き場がなくて、ただ歩き続けていたことしか覚えていない。

それが今、柔らかなベッドの上にいる。この部屋の穏やかさに、張り詰めていた心が少しほぐれているのを感じていた。