敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

壁掛け時計の針が、いつもより重たく回る気がした。

オフィスに閉じ込められた空気は、湿気と重圧で張り詰めている。

いつもはちらほらと雑談が聞こえる周りの席は、様子をうかがうように静まり返っていた。それが更に居心地の悪さを助長させ、私は呼吸を浅くする。

目の前に座る直属の上司である村上さんは、慣れた手つきで書類をバサリと机に投げ出した。

「これ、なんとかならなかったの?」

投げ出された書類には、部下である夏目さんの小さなミスが赤字で囲まれていた。

夏目さんというのは私よりも三年後輩の社員。
入社三年目の彼女は、いわゆる今どきの女の子で仕事へのやる気というものはどうしても見受けられない。

ただ、愛嬌は人一倍で先方や社内の男性社員からは好印象で業績は悪くはないため、女性であり地位の高い村上さんからは嫌われているようだった。

それはそれで私には関係の無いことなのだけれど、そのすべてが私の叱責へと形を変えるのだから堪らない。