立ち上がり、なんとか横断歩道を渡りきったあと、雨の中をどれだけ歩いたのか、覚えていない。
気づけば私は、何も無い路地の端に座り込んでいた。
冷たい雨粒が髪を、服を、そして心までも容赦なく濡らしていく。
冷えていく身体が、自分を安心させていた。もう目覚めたくないと、心の底から思っていた。
「大丈夫?」
そのとき、頭上から柔らかな声が降ってきた。
顔を上げると、傘を差した男性が私の前に立っている。彼は傘を私に向けて傾けていた。そのせいで、スーツはしっとりと身体に張り付き、雨を吸い込んで重そうだった。
優しさがにじむその目が、言葉に力を添えるようにゆっくりと問いかける。
思わず目を細めて見つめると、彼のパーマのかかった黒髪が雨に濡れ、ところどころ束になっていた。
高級そうなスーツ……、濡れちゃって申し訳ないな。
ぼんやりとした頭で彼を見つめる。
「……放っておいてください」
自分でも驚くほど、疲れ切った声が自然に出た。
こんな惨めでどうしようもない自分では、こんな綺麗な姿をした男性と視線を合わせるのも申し訳ない。
それでも、彼は立ち去ろうとはしなかった。
気づけば私は、何も無い路地の端に座り込んでいた。
冷たい雨粒が髪を、服を、そして心までも容赦なく濡らしていく。
冷えていく身体が、自分を安心させていた。もう目覚めたくないと、心の底から思っていた。
「大丈夫?」
そのとき、頭上から柔らかな声が降ってきた。
顔を上げると、傘を差した男性が私の前に立っている。彼は傘を私に向けて傾けていた。そのせいで、スーツはしっとりと身体に張り付き、雨を吸い込んで重そうだった。
優しさがにじむその目が、言葉に力を添えるようにゆっくりと問いかける。
思わず目を細めて見つめると、彼のパーマのかかった黒髪が雨に濡れ、ところどころ束になっていた。
高級そうなスーツ……、濡れちゃって申し訳ないな。
ぼんやりとした頭で彼を見つめる。
「……放っておいてください」
自分でも驚くほど、疲れ切った声が自然に出た。
こんな惨めでどうしようもない自分では、こんな綺麗な姿をした男性と視線を合わせるのも申し訳ない。
それでも、彼は立ち去ろうとはしなかった。



