敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

柊真の仕事を手伝い始めて、もうすぐ五年になる。

フリーランスとしてゼロから築き上げた柊真さんのシステムが、数年前に大きな成功を収め、やがて会社を設立。

それから少しずつ信頼できる仲間が増え、今では社員100人ほどの中小企業へと成長した。

この五年間、会社の成長が最優先だった。

私は、忙しい日々を共に過ごせることが幸せで、疲れた顔やふと見せる甘えた表情を独り占めできるだけで十分だった。

だけど、結婚という節目を迎えるには、それなりに時間が必要で。

ようやく会社が安定し、半年前に入籍。
そして今、新婚旅行へと向かっている。

飛行機が滑走路へ向かい始めると、ようやく私たちの間にリラックスした空気が流れる。

柊真はシートベルトを調整しながら、ふと問いかけた。

「で、今回の旅行で一番楽しみなことは?」
「えっと……やっぱり美味しい食べ物とか、綺麗な街並みとか……」

夢見るように答えると、彼はくすっと笑いながら首を横に振った。

「俺と過ごす時間じゃないんだ……?」
「そ、それはもちろん大前提だよ……!」

焦る私の手を、柊真がそっと包み込む。その温もりに、心が少しずつ落ち着いていくのを感じた。