敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

過去を話す柊真さんの声は淡々としていたけれど、その奥に深く沈んだ孤独が滲んでいた。

「だから、人を信じるのはやめたんだ。信じれば、また裏切られるだけだと思ったから」

私はただ黙って彼の言葉を聞いていた。けれど、気づけば頬を涙が伝っていた。胸がぎゅっと締めつけられる。

「そんなことが……あったんですね」

声が震える。何か言葉を返したくても、どんな言葉も彼の痛みを癒せる気がしなかった。

「その辛さは私には想像もできないけど、でも私は、絶対に柊真さんを裏切りません。これからもずっと、何があっても隣にいます、信じられなくても安心て貰えるように努力します」

ただひとつ、これだけが今の私に確実に言えることだった。

その想いを、迷いなく口にすると、柊真さんの肩がわずかに揺れる。驚いたように私を見つめる彼を、私は強く抱きしめる。

「だって……柊真さんは私の命の恩人です。あのとき助けてくれなかったら、私は――」

それ以上は言えなかった。過去への恐怖ではなく、彼への感謝が胸いっぱいに広がって、言葉にならなくなった。

柊真さんの瞳が揺れる。愛しさ、苦しさ、そして、救われたような表情に見えた。

「茉莉?」

彼が小さく私の名前を呼び、そっと頬に手を添えて涙を拭う。

「救われてるのは俺の方だよ……」

その言葉が、胸の奥に深く響いた。