その日の朝、会社のエントランスをくぐった瞬間、妙な違和感を覚えた。
フロア全体がざわついている。いつもの朝とは明らかに雰囲気が違う。誰もがスマホやPCの画面を覗き込み、何かを話し込んでいた。
「……何かあったのか?」
疑問に思いながらデスクに向かうと、すぐに隣の同僚が顔を上げた。
「おい、藤堂……これ、見たか?」
差し出されたスマホの画面には、ニュースサイトが開かれていた。そこには、見間違いようのない名前が躍っている。
「新会社K Holdings ――革新的なサービスを発表」
……は?
一瞬、何を見ているのかわからなくなった。
片桐が、会社を設立? しかも、新サービス? そんな話、一度も聞いていない。
食い入るように画面をスクロールすると、さらに衝撃的な文言が目に飛び込んできた。
「独自開発のシステムを武器に、業界の常識を覆す新規事業とは」
掲載されているプレゼン資料のスクリーンショットを見て、心臓が跳ね上がる。
そこにあったのは俺達が数年かけて練り上げたプロジェクト案だった。
「おい、これ……どういうことだ?」
自分でも驚くほど掠れた声が出た。だが、同僚は困惑したように眉を寄せるだけだった。
「……お前、本当に知らなかったのか?」
「知らなかった、どころじゃない。片桐はまだうちの社員だろ?」
「いや……昨日付けで退職してる」
「は?」
理解が追いつかない。
「上からメール来てただろ? 片桐、数週間前に退職願出してて、昨日が最終出社日だったらしい」
「……そんな話、聞いてない」
「でも、正式に受理されてるんだよ。で、今朝になってこの発表だ」
頭が真っ白になった。
知らない間に、片桐は会社を辞めていた。
それだけじゃない――俺のアイデアを持ち出し、それを武器に新会社を立ち上げた。
フロア全体がざわついている。いつもの朝とは明らかに雰囲気が違う。誰もがスマホやPCの画面を覗き込み、何かを話し込んでいた。
「……何かあったのか?」
疑問に思いながらデスクに向かうと、すぐに隣の同僚が顔を上げた。
「おい、藤堂……これ、見たか?」
差し出されたスマホの画面には、ニュースサイトが開かれていた。そこには、見間違いようのない名前が躍っている。
「新会社K Holdings ――革新的なサービスを発表」
……は?
一瞬、何を見ているのかわからなくなった。
片桐が、会社を設立? しかも、新サービス? そんな話、一度も聞いていない。
食い入るように画面をスクロールすると、さらに衝撃的な文言が目に飛び込んできた。
「独自開発のシステムを武器に、業界の常識を覆す新規事業とは」
掲載されているプレゼン資料のスクリーンショットを見て、心臓が跳ね上がる。
そこにあったのは俺達が数年かけて練り上げたプロジェクト案だった。
「おい、これ……どういうことだ?」
自分でも驚くほど掠れた声が出た。だが、同僚は困惑したように眉を寄せるだけだった。
「……お前、本当に知らなかったのか?」
「知らなかった、どころじゃない。片桐はまだうちの社員だろ?」
「いや……昨日付けで退職してる」
「は?」
理解が追いつかない。
「上からメール来てただろ? 片桐、数週間前に退職願出してて、昨日が最終出社日だったらしい」
「……そんな話、聞いてない」
「でも、正式に受理されてるんだよ。で、今朝になってこの発表だ」
頭が真っ白になった。
知らない間に、片桐は会社を辞めていた。
それだけじゃない――俺のアイデアを持ち出し、それを武器に新会社を立ち上げた。



