敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

帰り道、柊真さんは一言も発さず、足取りはいつもより速かった。必死に追いかけながら、彼の背中を見つめる。

広い肩。強い背中。なのに、今はとても遠く感じた。

不機嫌なのは明らかだった。偶然だったけれど、また片桐さんと会っていたところを見られてしまった。

私が悪い、言い訳なんて、できない、けど。

このまま信用を取り戻せないかもしれない。
二度と、優しい柊真さんには戻ってくれないかもしれない。

――そんな不安が、胸を締め付ける。
心の奥がじわりと熱くなり、視界が滲んだ。

涙をこらえようとするけれど、こぼれ落ちそうな感情を押し留めるのは難しかった。

私は立ち止まり、震える声で叫ぶ。

「柊真さん!」

彼の足がピタリと止まり、わずかに肩が揺れる。
大きく息をついた後、ゆっくりと振り返った。

「……ごめんなさい!」

胸が痛くなるほど、絞り出すような謝罪だった。

「別に怒ってないよ」

柊真さんは低く呟く。けれど、その声には怒りが滲んでいて、とてもそうは思えなかった。