敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

余裕の表情でその手を高く掲げた片桐の背後から、一人の男性が現れそのスマートフォンを軽々奪い取った。

「いい加減にしてくれないか」

低く響く声が、公園の静寂を切り裂いた。
片桐さんが片眉を上げ振り返る。

柊真さんは、無表情でスマホを操作し、写真を削除したようだった。ポイと地面に投げられたスマホにその場は静まりかえる。

「お前のやり方にはもううんざりなんだ……」

一歩、また一歩と近づく。その威圧感に片桐さんの余裕そうな笑みがわずかに崩れた。

柊真さんは、私を片桐さんから引き離し、低く言い放つ。

「これ以上、彼女に近づけば許さない」

その声には、絶対的な怒りが込められていた。

「強気だな。今の立場は俺の方が上のはずだ」

片桐さんは余裕そうな口調を装っているが、その奥に焦りが滲んでいる。

「この件に立場は関係ない。俺の秘書を——いや、大切な人を巻き込むな」

柊真さんの声が確かに響く。

——大切な人。

その言葉が、胸の奥にまっすぐ届いていた。
私の目からは、涙が溢れ出す。

その表情を横目に見た片桐さんは苦笑し、つまらなそうに肩をすくめる。

「……相変わらず厄介な男だ。ごめんね、茉莉さん、ちょっとした意地悪のつもりだったんだ」

胡散臭い笑顔を見せた彼はすぐに踵を返し、夜の闇へと消えていった。

その場は再び静まり返っていた。私は、柊真さんの隣に行くことも出来ず、ただ涙を隠すように立ち尽くしていた。

「帰ろう」

短く告げられた言葉。その声音には、ほんのわずかに優しさが滲んでいた。

「……はい」

柊真さんの背中を追いながら、私は改めて思う。

——彼を信じたい。そして、信じてもらいたい。

失ってしまった信頼を簡単に取り戻せるかは分からないけれど、その想いが確かなものになっていた。