敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

会議が終わり、他の社員たちが足早に去っていく中、私は少し離れた先で坂本先輩を見つけた。

無駄にしてしまったけれど、準備期間中も、そして今日も助けてくれた感謝だけは伝えたかった。

彼の後を追うと、先輩は同僚と何かを話している様子だった。後ろから駆け寄り、声をかけるタイミングを伺う。

だが、ふと耳に入った言葉が私の動きを止めた。

「木崎さんも、災難だよな。ただ、言われるの分かってるんだから、もう少し詰めてから参加すべきだったと思うけど」

自分の名前が話題に出たことに驚き、私は声をかけるタイミングを完全に失った。そのまま足を止め、後ろから耳を傾けてしまう。

「正直さ、あれは木崎さんの自業自得だと思うんだよ。だって３日クオリティだよ？普通に舐めてるでしょ」

同僚に対して出た坂本先輩の口調は軽かったが、その言葉は鋭く胸に刺さった。

「まぁ、コンペのライバルではあるわけだし。ライバルのレベルが低いのは助かるよね」

「お前、酷いな。親身になってやってたじゃん」
「そんなの適当だよ」

まるで殴られたような衝撃が全身を襲った。胸の奥が冷たく、硬くなっていく。

――そりゃそうだ。舐めてると思われたって仕方ない。

助けてくれた先輩に、私はただ失礼なことばかりしてしまったのだ。