敏腕システムエンジニアの優しすぎる独占欲〜誰にでも優しい彼が、私にだけ甘すぎる〜

どっと疲れた心を抱え、自宅の扉を開けた瞬間、空気が張り詰めているのがわかった。

リビングの中央に立つ柊真さんは、スーツの上着を無造作にソファへ放り投げ、腕を組んでいた。険しい表情のまま向けられる視線は鋭く、まるで逃げ道を塞ぐようだった。

「茉莉」

静かに呼ばれた名前。それなのに、張り詰めた怒りが隠しきれず、耳の奥にずしりと響く。

「片桐と会ってきたのか?」

その短い一言で、足が止まった。
動揺で胸がぎゅっと締めつけられる。片桐との接触はら知られるはずがなかったのに。

「ど、どうして……?」

震える声で問いかけようとした瞬間、柊真さんが冷ややかに言葉をかぶせた。

「片桐がわざわざ知らせてきた」

スマホがソファに向かって投げられる。

画面には、いくつかの業務連絡に続いて、
「いい秘書を持ったな」
そんな皮肉なメッセージとともに、カフェで珈琲を飲む私の写真が添えられていた。

血の気が引いていくのがわかる。背筋が寒くなり、指先が震えた。

片桐さんが、わざわざ柊真さんに伝えた。
それは、彼の揺さぶりだったのだろうか——。
こんなにも簡単に、関係が崩れてしまうことを見越して。